◆『相談課便り』創刊号(教育相談課紹介号) ようこそ! 岡山朝日高等学校のホームページです
『相談課便り』第1号(表面)
『相談課便り』創刊号のコンテンツ
教育相談課について
相談係の自己紹介
生徒のセクシャルハラストメント等の相談
相談室を知っていただくために
学校医によるこころの健康相談(第1回)
<平成17年4月発行>
『相談課便り』は色上質紙に印刷され、全校生徒に配布されています。
 <表面>
『相談課便り』第1号(裏面)
 <裏面>

 
 相談室を知っていただくために
   「クリスマスローズに会いに」     池本しおり
 クリスマスローズ……なんとも美しい響きをもつこの花は、半日陰を好む花です。その名の通り、クリスマスのころから咲き始める「冬咲き」のものと、早春に咲き始める「春咲き」のものとがあるようです。キンポウゲ科の多年草で、バラとは全く違った風情の花を咲かせます。
 我が家の庭の、木の根本にひっそりと咲くものは3月ころからの春咲きで、まだ冬枯れの名残りをとどめたさみしい庭に、文字通り花を添えてくれます。6種類のものが1株ずつあり、それぞれに色や形が微妙に違っていて、うつむき加減に咲く姿を見ていると、控えめに個性を主張しているようにも思えます。よく観察してみると、日当たりのいいところに植えた株よりも、日陰に植えたものの方が元気がよく、年々株が大きくなり、花もたくさん咲かせるようになりました。「この花は日陰の似合う花」。遠慮がちに、それでいてその存在を見るものに印象づける清楚な姿は、日陰でこそ輝くのかもしれません。
この4月から相談室の仕事を担当することになりました。相談室は2階の事務室前の階段を降りて、右手の奥まったところにある北向きの部屋です。担任をしている2年生の生徒に「相談室で面談をする」と言ったところ、何人かの生徒にその場所を聞かれました。今まで来談の必要がなかったからでしょうが、場所さえも認知されていない部屋のようです。また、これまで何人かの先生方から、「あの部屋はちょっと暗いでしょう」とか「あそこは寒いでしょう」という意味のことを言われました。私はこのような声かけをしてもらうたびに、そのことをありがたく思いました。なぜなら、相談室の立地条件が悪いことを気の毒に思って発せられたあたたかい言葉であることが、確かに伝わってくるからです。
 カウンセリングを勉強すると、「相手にチューニングする」ということを教えられます。深い悩みを抱え、こころのエネルギーが低下した人の話を聴くときには、その人の波長に合うように、こちら側がチューニングするのです。病気で寝込んでいるときには、いつもなら気にかからない音がひどく気にかかったり、となりの部屋の話し声が妙に癇に障ったりすることがあります。元気なときなら何でもないことが、こころや身体が弱っているときには意外とこたえるものです。カウンセリングの場面では相手の様子によって、その人の今の状態にふさわしいこちら側の在り方が求められます。声のトーンや表情や態度など、相手にチューニングすることはとても大切なことなのです。それとともに、部屋の雰囲気などもやはり重要です。精神分析で有名なフロイトは、面接室にアンティークの品々を置いていたそうです。一般的にはカーテンや壁の色、植物の鉢植えや調度品、部屋の立地条件など、さまざまなものが部屋の雰囲気を左右しますので、可能な限りほっとできる空間であることに越したことはないようです。
 北向きの相談室には大きな窓があり、レースのカーテンと遮光カーテンがかかっています。ほどよい日差しが入ってくるとは言い難いのですが、それでもパーッと明るい光が入ってくるよりはこちらの方がいいと思っています。なぜなら、相談モードにふさわしいからです。迷っているときや、不安なとき、苦しいとき、ゆっくりと次の言葉を探しながら思いを巡らすには、普段のレベルから少しばかりトーンダウンしたものの方がこころが落ち着きます。カウンセラーの在り方も含め、環境がその人にチューニングしてくれている状態であることは、とても大切なことなのです。
 4月の初めに庭から採ってきたクリスマスローズを、相談室のテーブルに活けています。日陰の似合う花だけあって、部屋の雰囲気にぴったりです。しかも、半月たった今でもとても元気です。きっとこの部屋の環境が、この花にはちょうどよいのでしょう。このページに載せる写真を探しているとき、偶然にも次のような一節に出会いました。
俗説ではあるが、アダムとイブが楽園を追われるときに、罪の浄化のシンボルとして、
この花を持ち出したという。花ことばは「私の不安を救いたまえ」。
(『花歳時記大百科』北隆館)
「私の不安を救いたまえ」という花ことばと「相談室」という取り合わせがあまりにもぴったりしすぎて、思わず苦笑してしまいました。しかしよく考えてみると、俗説とはいえ、たくさんの花の中からクリスマスローズがこの話の主役として選ばれたのには、何か必然性があるのでしょう。清楚な姿が「浄化のシンボル」のイメージを持ち合わせているようにも思えます。そして、日陰でひっそりと咲く風情や、うつむき加減の姿から、このような花ことばが生まれたのかもしれません。
 人生にはパーッと明るい日差しが似合う日もあれば、少々うす暗い弱々しい光が似合う日もあります。「私の不安を救いたまえ」という思いでいっぱいのときには、きっと後者の方に身を置いているときだと思います。そんなときには、相談室のクリスマスローズに会いに来てください。きっとあなたの思いに寄り添ってくれるでしょう。
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