教育相談課では今年度全学年を対象に「いじめ問題・悩みに関する調査」を行いました。この取り組みは時代的背景により質問項目や形態が変わってきてはいますが、教育相談課として長年来継続的に実施しているものです。2・1年生は毎年実施してきましたが、今回初めて3年生も対象とし、本校全体の実態把握に努めました。「問A」は質問法、「問B・問C」は自由記述で答えてもらいました。 |
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◇「問A いじめ・悩みについての質問」の結果 |
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1=あてはまらない 2=あまりあてはまらない 3=ややあてはまる 4=あてはまるの
4件法で回答し、平均値を表す |
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「問A」質問項目 |
3年 |
2年 |
1年 |
1 |
生活のリズムが整わず、体調をよく崩す。 |
2.1 |
2.1 |
2.1 |
2 |
友人関係で悩むことがよくある。 |
1.8 |
1.9 |
2.0 |
3 |
学校内に信頼して相談できる人がいない。 |
1.6 |
1.8 |
1.8 |
4 |
勉強の仕方がわからず、集中できない。 |
2.3 |
2.3 |
2.4 |
5 |
将来の見通しが立たず、気力がわかない。 |
2.1 |
2.1 |
2.2 |
6 |
学校に行きたくないとよく思う。 |
1.9 |
1.9 |
1.8 |
7 |
先生は私の話を聞いてくれない。 |
1.5 |
1.7 |
1.6 |
8 |
先生は成績で生徒を差別する。 |
1.8 |
2.0 |
1.9 |
9 |
先生は授業の進め方が悪く、説明がわからない。 |
1.8 |
1.9 |
1.8 |
10 |
私には友人がいない。付き合いがうまくいかない。 |
1.4 |
1.3 |
1.3 |
11 |
私はいじめられている。 |
1.1 |
1.1 |
1.1 |
12 |
からかわれたり、手を出されることがあり、いやだ。 |
1.3 |
1.4 |
1.4 |
13 |
言葉や態度で傷つけられることがある。 |
1.5 |
1.5 |
1.7 |
14 |
クラスの中に改めるべき問題がある。 |
1.6 |
1.8 |
1.9 |
15 |
いじめたりいじめられたりしている人がいる。 |
1.3 |
1.4 |
1.6 |
16 |
人が私をどう思っているのかとても気になる。 |
2.3 |
2.4 |
2.5 |
17 |
私のことをわかってくれる人は一人もいない。 |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
18 |
家族は私に過剰に期待をかける。 |
1.7 |
1.8 |
1.9 |
19 |
家族には、悩みがあっても相談できない。 |
1.8 |
1.9 |
1.4 |
20 |
私の落ち着ける場所はない。 |
1.5 |
1.5 |
1.4 |
平 均 |
1.7 |
1.8 |
1.8 |
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数値をみると学年の差ははとんどなく、学校全体の傾向が見えてきます。「勉強のこと」「将来の見通し」「授業」「成績」が比較的高いポイントになっています。またハードスケジュールのため、生活リズムが整わず体調管理ができにくい様子もうかがえます。 |
「11 私はいじめられている」で「あてはまる」と答えた生徒は各学年とも0人でしたが「ややあてはまる」と答えた生徒は、1年生で5人、2年生で3人、3年生で5人いました。その他「からかい」「言葉や態度で傷つける」など「いじめ」と捉えられる言動もみられることがわかります |
「16人が自分をどう思っているか」は各学年ともポイントが高く、「2 友人関係の悩み」も多いことがわかります。また「友人がいない」「わかってくれる人が一人もいない」と答える生徒も数名います。対人関係がうまくいかなかったり、思いを上手に伝えられなかったり、孤独を感じたり…他人の目を気にしつつ、さまざまな葛藤を抱えて精一杯生きている高校生の姿がうかがえます。 |
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◇【問B 朝日高校に「いじめ」はありますか。あるとすればどのようなことですか】について |
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「ある」「ないと思う」「少なからずある」「分からない」 |
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「あるとすれば」→「ネット上での中傷」「言葉の暴力」「いじり」「からかい」「陰口」「無視」「冷笑」「いやがらせ」「精神的なもの」などがあがりました。 |
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◇【問C もしも「いじめ」にあったり悩んでいる友人がいたら、あなたはどうしますか】について |
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「話を聞いてあげる」「解決の方法を一緒に考える」「できるだけ自分で解決する」「先生や親に相談する」 |
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・ |
「何もしない」「できるだけ関わらないようにする」「何ができるかわからない」「行動は難しい」 |
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・ |
「助けたいと思うが方法がわからない」「助けるために具体的に何をすればよいか学びたい」などがあがりました。 |
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2007年1月に文部科学省がいじめの定義を見直しました。見直し案では「子どもが一定の人間関係のある者から、心理的・物理的攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」「いじめか否かの判断は、いじめられた子どもの立場に立って行うよう徹底させる」とされました。また具体的ないじめの種類については、「パソコン・携帯電話での中傷」「悪口」などが追加されました。いじめの件数についても「発生件数」から「認知件数」に変更されました。このような経緯から本校におけるいじめの認知件数も少なくないことが予想され、さまざまな課題が含まれていることが考えられます。
今回の調査を見る限り、ほとんどの生徒が「いじめは悪い行為であると考え、可能であるならなんとかしたい」という誠実な思いをもっています。と同時に「現実には解決が難しく結局何もしない」と答える生徒もあり、問題の難しさを感じさせます。この結果は「学年団」「教育相談課」「いじめ問題対策委員会」で報告検討され、クラス担任を中心に個別にまた集団に働きかけ継続的に対応しているところです。
また教育相談課では今年度、保健委員を対象とし希望者も受け入れてピアサポート(Peer=仲間 Support=支援)のトレーニング研修を始めています。ピアサポートは欧米から導入された心理教育の一つで、日本でも少しずつ広がりを見せています。問Cの記述の中に「具体的な解決方法を学びたい」「解決のために何ができるか学びたい」「ピアサポートを生かしたい」という積極的な意見もみられ、「仲間のため自分に何ができるか」を考えてくれている生徒がいることがわかります。ピアサポート活動を通して参加者自身が成長し、生徒達の中に潜在的に備わっている仲間支援の力を引き出すことができれば、と考えています。一人一人が大切にされ認め合うことのできる温かい学校になれば、それはとても素敵なことではないでしょうか。 |