◆『相談課便り』第13号◆ ようこそ! 岡山朝日高等学校のホームページです
『相談課便り』第13号 コンテンツ
教育相談課について
相談係の自己紹介
学校医によるこころの健康相談
スクール・カウンセラーによる相談
生徒のセクシャルハラスメント等の相談
「ピアサポートによせる思い」 池本しおり
<平成20年5月発行>
 <表面>
 <裏面>

 教育相談課について
  教育相談課では「安心して相談できる場」の提供を最も重要なこととして考えています。深刻な相談だけでなく,ささいな気がかりであっても,どうぞお気軽にご利用ください。面接相談と,電話相談の両方を行っています。また,生徒からの相談のみならず,保護者の皆さんや教職員からのご相談にも対応させていただきます。スタッフは9人で,次のような方針で相談活動を行っています。

 @相談に来たあなたが主人公です       A秘密は厳重に守られます
 B気持ちを大切に,共に考える姿勢を大切にします  C予防的・開発的教育相談も提供します


 相談係の自己紹介
1年団 理科 高祖幸男
 今年、朝日高校に転勤してきました。四月当初、校門を入るとたくさんの桜が咲いていました。さらに校内を歩いていくと多くの木立が眺められ、東方には青々とした操山を望み、何かそれらが緊張感の中にもホッとした瞬間にもなりました。この自然に恵まれた朝日高校で、人と人とのふれあい、あるいは自然の美しさに素直に感動できる青春時代のみなさんに関わっていけることをうれしく思っています。どうぞよろしくお願いします。

1年団 保健体育科 香取正光
 ちょっといい話!私にとってはめっちゃ嬉しい話!
 先日、15年ほど前の卒業生の女の子から電話がありました。彼女の母親が買い物をして、自転車のかごに物を入れようとしたときに自転車が倒れたそうです。周りに人がいましたが、みんな素通り…。そこに朝日高校の制服を着た生徒が近寄ってきて自転車をおこしてくれたそうです。凄く嬉しかったらしく、彼女にすぐ電話をして報告してくれと頼んだそうです。素晴らしい〜!!嬉しぃ〜!!また聞きたぁ〜い!!

1年団 養護助教諭 直原可菜
 新学期も始まり、新たな環境での学校生活はどうでしょうか?毎日充実した日々を過ごしているでしょうか?私も今年から岡山朝日高校に勤務することになり、日々みなさんと触れ合うことで元気をもらっています。これから様々な学校行事などを通して、一緒に多くの思い出を作っていきましょう。保健室にも顔を見せに来てくださいね。

2年団 地歴公民 永田 宏子
 風薫る五月,GWも過ぎて新しい学校・新しいクラスに慣れてきましたか? 新しい人間関係をつくっていくのは緊張するものです(先生たちも同じです)。「だれか声をかけてくれないかな」と待っているよりも,あなたから思い切って「いっしょにご飯食べない?」と声をかけてみませんか。きっと友達の輪が広がりますよ。

2年団 国語 池本 しおり
 昨年から始めたピアサポートを,6月中旬からまた始める予定です。1・2年生の保健委員だけでなく,希望者も歓迎します。あなたもピアサポーターになってみませんか。楽しくて,あたたかくて,わくわくするような体験ができますよ。そして必ず,新しい自分を発見することができる,そんな交流の場です。

2年団 国語 大西由美
 生きているといろんなことがあります。楽しいこと苦しいこと、奇跡的なこと…受け入れたくない嫌なこともあるでしょう。でも、それが現実ならば、まず受けとめて、そこから考えることが大事なのです。自分のまわりで起きる全てのことを、自分を磨く糧にできる人が、本当に強くて優しい人ではないかと最近思うようになりました。私もそうなれるよう、日々出逢うすべての人に、ものに、感謝しながら生活するよう心がけたいと思っています。 でも…まだまだ…。みんな成長過程、先生も同じです。毎日頑張る生徒の皆さんの姿が私を励ましてくれます。これからも、一緒に頑張ろうね!

3年団 地歴公民 一色節二
 青年期は悩み多き時代といわれてきたが、最近は、せっかちに解決を急ぐばかりで、自然や他者と対話しつつ、長いスパンでゆったりと悩む人にはほとんどお目にかかれなくなった。残念なことである。悩める時は悩んだほうがよいと思っているのだが ・・・

3年団 英語科 柴田みさえ
 新1年生の皆さん、高校生活はどうでしょうか?私はよく、「先生元気ですね!」と言われます。でもその私の元気は、毎日頑張って学校生活を送っている皆さんからもらっています。今年は、皆さんからもらっている元気パワーを減らすことなく次の人に渡すことができるように、元気パワーがうまく循環するように頑張りたいと思っています。自分でも元気を作り出していきますよ。よろしくお願いします。

3年団 養護教諭 松本雅子
 皆さんは今、“飛び立つための準備”をしている、といったところでしょうか。翼が折れたり傷ついたりした時は、癒えるまで時間がかかることもあるでしょう。保健室では、毎日さまざまな訴えや思いを受けとめています。一人では苦しすぎる時、保健室や相談室という場所があるということを思い出してください。


 学校医によるこころの健康相談
 本校では精神科校医の中野善行先生による「こころの健康相談」を年間5回計画し,各回ごとにご案内を差し上げています。専門のお立場からの支援をいただき,毎回好評をいただいています。
 第1回目は6月5日(木)です。以後は7月・9月・11月・2月に実施する予定です。教育相談課(池本しおり・松本雅子)または担任までお申し込みください。
  TEL  272−1271(岡山朝日高校)

 スクール・カウンセラーによる相談
 今年度はスクールカウンセラーとして森口章先生先生においでいただきます。5月29日には1・2年生対象の講演会をお願いしました。このお話を聞いて,ほっとした生徒も多かったのではないでしょうか。
 森口先生は高校の教師をご退職後,現在は「沢田の杖塾」を主宰され,山陽新聞の相談欄を担当されたり,講演会に回られたり,多方面で活躍されています。本校では生徒や保護者の相談に応じていただいたり,研修会や事例検討会などにもお力添えをいただく予定です。

 生徒のセクシャルハラスメント等の相談
 みなさんがセクシャルハラスメント等のことで相談したいときには,次のスタッフが対応させていただきます。
    池本 しおり (国語科・教育相談課長)     佐藤 克己 (保健体育科) 
    大西 淑江  (家庭科主任)            松本 雅子 (養護教諭・教育相談係)


 
 「ピアサポートによせる思い」  池本 しおり
 朝日高校には「自主自律」を育てる仕掛けがいろいろあります。朝の会も帰りの会もしない。授業の変更やその日の伝達事項は連絡黒板に書かれ,生徒たちはそれを見て行動する。新しい問題集を購入すれば,年間計画と共に配り,定期考査の前にはその出題範囲をいちいち念押ししたりしない。毎日の清掃時間を特別に設けない。購買のアイスクリームの無人販売(そしてその出納は正しく行われている)・。
 毎年5月の初めに行われている1日ホームルームは,生徒たちが行き先を決め,計画を立てて実行するという,まさに生徒中心の学校行事です。クラスでの話し合いや相手先との交渉のなかで,生徒たちはさまざまなことを学び,新しいクラスの仲間作りをしていきます。担任はほとんどそばで見ているだけで,できるだけ生徒たちの自主性に任せています。文化祭や体育祭がその準備や運営も含めて生徒たちによって立派に成し遂げられるのも,こういった日常の積み重ねがあってこそです。自主自律の精神が培われることと,それが発揮されることとは表裏一体のものだと思われます。
 教師主導で細かく指示を出せば,きっと滞りなくうまくできあがるであろうことを,あえて生徒に委ねることは,かえって勇気のいることかもしれません。また,少々時間がかかることかもしれません。そのことをもって「朝日高は冷たい」と非難する人があるかもしれません。しかし,高校時代に失敗しながらも考え,学び,身につけていったことは,生徒たちが将来社会に出ていったときの大きな財産になると考えています。このようなよき伝統は,ずっと継承してもらいたい。と同時に,必要に応じて他者にあたたかい支援の手を差し伸べられる人になってもらいたい,と考えていました。
 一方,「私事化(privatization)」という言葉が聞かれるようになって久しくなります。生活が豊かになり,個人の生活が自己完結しがちになり,自分に直接関係のないことには一切関与しないという人が増えています。少々お節介を焼こうものなら,かえって疎ましく思われてしまいますから,人と人とが遠慮し,助け合う場面が極端に少なくなっているようにも感じられます。そのような社会の中で,「朝日の自主自律」を履き違えてしまい,自分さえよければ,他者には関心を示さない,あるいは困っている人がいても見て見ぬふりをする生徒がいるのではないかと危惧の念を抱いていました。

 教育相談課で毎年実施している「いじめ問題・悩みに関する調査」のなかに「もしも,いじめにあったり,悩んでいる友人がいたら,あなたはどうしますか」という質問項目があります。その答えとして「困っているなら助けてあげたい」「相談にのる」「話を聞くだけでも聞きたい」「大人に知らせる」といった回答が各クラスでかなり見受けられ,ほっと安堵します。また,「助けたいがどうしていいかわからない」「それとなく気は遣うが,目立ったことはしたくない」「結局見ているしかないと思う」「自分に関係ないことなら無視する」といった意見もあります。積極的に関わることで,かえって自分がいじめのターゲットになってしまうかもしれないと恐れるのは当然であり,そのことを考えると「いじめは悪い」とわかっていてもなかなか行動にまで移せないのかもしれません。
 そのなかに,「助けたいとは思うが,方法がよくわからないし,自分にその力が無いような気もする。助けるためには具体的になにをすればよいのか,それを学びたい」という明確な意志を示す記述がありました。「そうか・・・」と思わず唸りました。生徒たちはこういったことを知りたいと思っているのに,学校教育の中でどれだけのことを提供しているだろうか,そう思わずにいられませんでした。

 「自主自律」の精神を体現することと「思いやり」をもつことは決して矛盾するものではありません。それどころか,自分で考え自らを律して行動できる人こそが,真の思いやりをもち,相手を尊重することができると考えます。本校の教育目標に謳われている「自主自律」と「自重互敬」の精神はこういったことではないかと思われます。前述の通り,本校の教育活動のなかには前者を涵養するチャンスはあらゆるところに見受けられますが,後者については手薄であると感じていました。

 教育相談課で何かできないだろうか・・・。と考え,それを一つの形として試行してみようとしたのがピアサポートです。もちろん万能ではありませんが,なにかのきっかけになれば,と考えてのことです。ピア(Peer=仲間)サポート(Support=支援)は,生徒の中に仲間支援の力を育て,活用する取り組みです。カナダやアメリカ,イギリスなどの学校で発展し,今では多くの国々に広まっています。日本には1990年代に紹介され,小・中学校を中心に全国各地の学校で実践されるようになりましたが,高校での実践はあまり多くありません。岡山県における実践校は,全校種通じてもまだ少数です。

 このプログラムに参加した生徒は,トレーニングを受けることで,他者支援のための資質や能力を養います。また,サポートのためのスキルを身につけるだけでなく,他者と交流することで人間関係を学び,社会性を培うことも目標の一つです。そして,サポート活動をする過程で,自分が他者のために役立つ経験を積んだり,うまくいかなかった点を修正したりすることで,対人関係調整力を身につけ,「自分もだれかの役に立った」という実感から自己肯定感を高めることが期待されます。

 ピアサポートには,いじめや暴力などの問題行動が起こりにくくなる,予防的なはたらきがあることも,さまざまな実践から報告がなされています。本校においても,ピアサポート・プログラムを通じて,学校の中に一層の共感的であたたかい雰囲気をつくることができれば,と考えました。

 吉川武彦氏(講演当時,国立精神・神経センター精神保健研究所所長)は『子どものこころに迫る』と題する講演の中で,「人間関係の希薄な子どもたち」を「ビー玉人間」と呼び,「つるつるで,きれいで,見た目にはいいけれども,“球”ですから,接するときには1点でしか接することができないはずです。すなわち,支えることも支えてもらうこともできない人間をつくってしまったといえましょう。ビー玉を入れ物の中に入れて,入れ物を壊してしまえば,ビー玉はバラバラになって机の上に散ってしまいます。ところが入れ物の中に,拾ってきた石ころを入れて積み上げ,その入れ物を壊したならば,石ころは少し広がるかもしれませんが,お互いを支え合いバラバラにはなりません。ということは,私たちはビー玉人間ではなく,石ころ人間を育てなければいけないのではないかとも言えるでしょう。石ころはお互いがすれ合って熱も出る,つまり人でたとえればけんかもするでしょうが,支え合うこともできるのです。石の山が崩れないように,人の集団はバラバラにならないのです。」と述べています。

 「お互いを支え合うことのできる集団」はピアサポートの目指すイメージです。生徒たちの多くは孤独を抱えながら,それでもやはり人と触れ合うことを求めているように見えます。そして,お互いに本音で話し合い,支え合えるような人間関係をもつことができるとするならば,そうしたいと願っているのではないでしょうか。ただ,彼らは社会全体として希薄になってしまった人間関係や,忙しい毎日の中で,なかなかそういった学びの場をもつことができずに育ってしまい,どうやって人間関係をもてばいいのかわからなかったり,傷つくことを恐れて人と本音で接することに臆病になっているだけかもしれない。そして,傷つけ合ってしまったときに,その関係を修復する自信がないために,ますますお互いに深いかかわりを避けているのではないだろうか・・・長年教育相談に関わってきて実感していることです。

 昨年度は最終的に32人のピアサポーターたちが育ち,それぞれが自分にできる範囲のささやかなサポート活動をしました。私はこの活動のなかでサポーターたちが支える側になるばかりではなく,上手に支えてもらう側に回る体験を重視しました。「支え上手は支えられ上手」ということを何度となく生徒たちに伝え,また協力することで達成できる演習なども,トレーニングのなかで積極的に提供しました。「けんかもするが,支え合うこともできる石ころ人間」をイメージしながら,「大事なのは失敗しないことではなく,失敗したときに立て直せること」などと話すなかで,生徒たちも折りにふれ,その実感を深めてくれたことと思います。彼らがトレーニングやサポート活動を楽しみながら,大きく成長したことは言うまでもありません。

 今年もまた,6月中旬からピアサポートを始めます。この活動のなかで大切にしたいことはたくさんありますが,「やっぱり友だちっていいな」と実感する場・・・それを提供することを一番に心がけたいと思っています。
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