私は超のつく昆虫好きで、虫屋と呼ばれる部類の人間である!そんな私が大学生の頃いた研究室は、チョウの昆虫生理学を専門に扱っている所だった。実験のための試料を常に500匹ほどキープしていため、年中無休でチョウの幼虫の飼育をしなければならず、研究室に配属された当初は夢の中でも幼虫と戯れていた。そんな苦しくも楽しい大学時代の恩師から学んだことは多かった。あまりにも多いので、その一部を紹介したい。
昆虫が好きで、昆虫の研究がしたい!と当時の私は研究者を目指して研究室の戸をたたいた。昆虫大好き人間にとっては、昆虫に囲まれ、その生理的メカニズムを解明する研究室は非常にすばらしい空間だった。そんな研究室での生活にも慣れた頃、教授から『あなたは昆虫が趣味だから、研究を“楽しんで”いるね。それを“嬉しい”と思えれば研究者でもやっていけるかなぁ。』と言われたが、その時の私にはこの言葉を理解することはできなかった。
大学での4年間の後、以前から興味のあった分類学(対象は昆虫)を専攻するために、別の大学院へ進学した。そこでも日夜、先輩や先生方と昆虫分類学について語り明かし、楽しく研究を続けることができたが、嬉しいと思うことはなかった。そして、就職をするか、博士課程に進学するかを考えたとき、果たして“楽しい”だけでこの先、研究を続けられるだろうか、と思った。あの時の教授の言葉は、楽しいことばかりではない中で、喜びを見出せなければ職業としてやっていけない、ということだったのだろう。もしくは、どんなことにも嬉しいと思えるように取り組みなさい、ということだったのだろう。
教員になって1年が過ぎようとしている今日、嬉しいと思えることが多くなった。
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