|
きっかけは
何処にでも
転がっている
自分の心
一つで決まる
数えれば本当は
不安でいっぱいの
小春日和なら
自分を 勁(つよ)く
するしかない |
オタオタして
すぐ動揺して
弱っちい心だ
だからこそ
闘うことが美しい
強い自分も
弱い自分も
ない交ぜだからこそ
支え合うことが
素敵なんだ |
言われている間は
人は本当には
立ち上がれない
チャンスは
自ら掴むもの
何かにつけて
気にしすぎという
小心こそは敵であり
私を湿気(しけ)った
せんべいにする |
|
この本の著者岩崎さんは、3歳で筋ジストロフィーを発症し、37歳の現在は人工呼吸器と経管食で、生活全てに介助を受けている。この本のタイトルも、「点滴ポールに/経管食/生き抜くと/いう/旗印」という詩句からとられている。作者のそんな背景を知らなくても、詩句からは大きな力が感じられる。ぎりぎりの所で生きている人が発する言葉だからなのだろう。
|
皆さんの中に、切実な苦しみの中に居る人はそれほど多くないかもしれないが、だとしても、悩みのただ中にいる人にとって、苦しいには違いない。そんなとき、苦しいことを、表現できること、そしてそのことで人と繋がることができることが、人を救う大きな力になるのだとつくづく思う。言葉(歌)の力だ。古今集仮名序で紀貫之が書いている通りだ。苦しさの中にいるときは、それを表現してみるといい。愚痴を友達や家族に聞いてもらうのもいいし、詩や歌句、文章にしてみるのもいい。
もう一つ、詩(表現)の力ということの他に、この作品集の中で触れておきたいものがある。次の詩だ。
|
|
自分の力で
手に取って
新聞を読む
最後まで
無関心でいたくない
|
障がい者は戦争のない
平和の中でのみ
生きていける
だからこそ平和を担う
世界市民となれるはず
|
*「障害」ではなく「障がい(碍)」の字の違いに注意してください。
|
寝たきりで外出がままならない著者は、健常者にくらべると、社会との繋がりが少ないと思われがちだ。しかし、彼は「自分の力で/手に取って/新聞を読む」のだ。あなたは社会に対して「無関心でいたくない」と思っているだろうか。自分の平安のことしか頭にない、ということはないだろうか。障碍者だからこそ「平和を担う/世界市民となれる」という発想の見事さ。大きな可能性をもつ皆さんには、是非この声を聴く力を持って成長していってほしい。 |