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『相談課便り』第43号 コンテンツ
烏城を望む踊り場から 小網 晴男
Serendipity 島村 精二
休日のレストランにて 大塚 崇史
手紙 藤井   茜
「いじめ問題・悩みに関する調査」結果の概要
神田 美紀
<平成27年12月発行>
 <表面>
 <裏面>

 烏城を望む踊り場から  小網 晴男
  花梨,栃,銀杏,椎,椚,楢,楠,梔,椿,栴檀,メタセコイア等,実を付ける樹木の多さに驚かされた8年間。花をつけ,操山に生息する共生相手にシグナルを送る。操山から飛来した多様な鳥類が受粉を助け,そして,樹木たちは子孫を残す。一方,3億年以上前から続く風の力を利用した受粉により,子孫を残すものもいる。
  人々は,「古い歴史と伝統」,「日本でも有数のまなびの場」等,様々な形容を「岡山朝日」の前に置く。しかし,私にとっての「岡山朝日」は,数多くの不思議を提供し,私にまなびを促す神秘的な時空でもある。未来の夢実現のために,君たちひとりひとりが定めたルーチンの中に少し遊びを持たせることはできないだろうか? 君たちがこの時空の好きな位置に立ち,心を静めて回りを眺めてみよう。きっと,多弁な時空は,君たちにまなびを促す神秘を見せてくれるはず。例えば,東西方向からずれた校舎群と50年以上前のネコの生痕化石とかを。
      

 Serendipity    島村 精二
 1年の進路講演会において,安達昌二先生がお話になった”Serendipity” という言葉を覚えているだろうか。セイロン(Serendip)の王様が,3人の王子を「鍛える」ために旅に出した。彼らは旅の途中で,いろんなことに出会い,そして失敗を繰り返す。しかし,いつも探していたものとは異なるものを発見して難局を切り抜けていく。そんな童話がもとになっている言葉で,探していたものとは別の価値のあるものを見つけ出す才能・能力を指す。
 私たちは生きていく中で自分が思いもしなかった方向に進んでいくことが度々ある。高校時代の友人に出会い近況を話すと,必ずと言っていいほど,「島村(君)が朝日高校の先生なんか務まるの?」という問いが返ってくる。高校時代の自分の姿を思い返すと当然のことで,まさか朝日高校のような名門校で教壇に立って教えるなんて自分自身でも思いもよらなかったことだ。朝日高校で教師をするというのはなかなか大変なことで,自分の力不足,ふがいなさに落ち込み,情けない思いをすることも少なくない。でも「朝日高校」という思いもしなかった場所に身を置くことになったために多くの貴重な体験ができたことは間違いない。学びに真摯に向き合う同僚の先生方から,有言無言に様々なことを教えていただけた。県内にとどまらず県外の多くの先生方と交流することもできたし,安達先生のような深い見識を持つ方々と知り合い,人生における重要な視座を示していただいた。また何よりも,前向きにひたむきに努力する生徒たちの姿から教師として大切なことをたくさん教わった。弱い自分ときちんと向き合い自分の最善を尽くす覚悟を持つことで,思いがけない貴重なものに出会うことができる,これこそが朝日高校で得た私の”Serendipity”かもしれない。
 今担当している2年生もいよいよ受験という厳しいステージへと進むことになる。多くの人にとって,自分の将来を考えながら自分自身と向き合う人生で最初の試練となるであろう。しかし,その中で新たなものを見つけ出し,さらに大きく成長していく,そんな「朝日髙生」の姿を今まで何度も目にしてきた。彼ら彼女たちもきっと同じように真の「朝日髙生」に成長していくだろう。そう信じながら,ともに歩んでいきたい。
富士登山の時のように。
                               

 休日のレストランにて    大塚 崇史 
 先日,昼食で立ち寄ったレストランでのこと。ドリンクバーのコーヒーを,3,4歳くらいの小さな女の子がお盆に載せて運んでいた。隣にはお母さんが女の子のペースに合わせて,ゆっくりとした動きでついて行く。こぼさないように,ゆっくり,ゆっくりと運ぶ様子がとても可愛かった。それでも,少しお盆の上にこぼしてしまったらしく,「あ,こぼれちゃった」と,女の子。隣で,「いいの。お盆の上なんだから。そのためのお盆なんだから」と,お母さん。女の子は結局,三往復して,お父さん,お母さん,お祖母ちゃんのコーヒーを運び,誇らしげな顔でお盆を元の場所に戻した。
 なんだか良いな,と思いながらこの光景を眺めていた。危ないから,こぼすといけないから,時間がかかるから,という理由で,この子にコーヒーを運ばせないのではなく,やらせてみる。お母さんは,何かあったときのために,横にあるいは後ろについて行く。多少の失敗は気にしない。むしろ,やらせてみて,失敗もさせてみる。
 ここ十数年の間に,世の中には効率と成果を過剰に重視する空気がすっかり広がってしまった。その中で,回り道や失敗は効率的,合理的という観点から見れば,「悪」であり,あってはならないこととして扱われる。しかし,回り道や失敗は,本当に生産性のない,無意味なものだろうか。
 先日,二年生の現代文の教材で扱った小説(馬術の長距離競技の話)に,次のような一節があった。「失敗すると,完走したときの百倍もものを考えるよな」。この発言をした人物はこうも言っている。失敗して,自分の弱いところ,悪いところが見えるのもいいことだ。それもあくまで「現時点での」ということだから,と。
 一人の人が育つためには,時間がかかる。しかも,規則正しく,同じペースで階段を上がっていくようなものではない。一見,時間の無駄のように思える回り道をしながら,螺旋状に同じところをぐるぐる回りながら,少しずつ進んでいくようなものなのではないかと思う。大人はときに,自分がそうやって成長してきた事実を忘れ,子どもに最短距離を求めてしまうことがある。じれったくなって,つい,手を出そうとしてしまう。
 「効率」というものさしでは計ることのできないものが,世の中にはたくさんある。特に「人が育つ」ということに関しては,促成栽培やハウス栽培のような,効率を重視した方法はあてはまらない,あてはめてはいけないのではないかと思う。
 時間がかかっても,つまづいても,こぼしてしまっても,その確かな歩みを,傍らで我慢強く見守っていく。それが「大人」の役目なのではないだろうか,と思っている。



 
 手紙    藤井  茜
 気が付けば2015年が終わりに近づいている。年末には大掃除をして新たな年を迎える。先日,実家の片付けをしていた。部屋に置いてあるものが,昔の私を思い起こさせる。高校卒業後,実家を出て一人暮らしをしているため,私の部屋は高校時代の面影を存分に残している。学習机の引き出しには使いかけのペンが数知れず,友人との手紙のやりとりや山積みにされた模試の結果,折れてしまったバドミントンラケットまで捨てずに取ってある。買ったばかりで新品の頃や,手紙をもらった当初は嬉しい気持ちはあるがそれ以上に特に何もなかった。今になり,それら一つひとつが今の私なるまでに影響を与えてきたのだなぁと,特別な感情が生まれてくる。当時はそれが思い出になるなんて考えてもいなかった出来事が振り返ったときに思い出として語られることもある。
 懐かしい手紙を手にとり,夢中になって読み返す。読んでいると,同じような内容がたくさんある。私や友人の悩みや,その日に思ったこと,どうでもいいような話が赤裸々に綴られている。手紙を何通も読んだ。「もっと自信持ち。」「悩んだって仕方ないが。」「一人じゃないからね。」私に向けられる言葉はこればかり。昔の手紙を読みながら,昔の私を客観的に見ることができる。今なら,友人からの言葉がスッと入ってくるが,当時は自分に自信を持つことも,ポジティブな考え方をすることも難しかった。今でもそれが難しいときもあるし,昔と変わっていないなぁと感じることもあるが,変わらないことが私の個性なんだと受け止めている。あの頃とは良い方向に変われたな,と感じることが私の成長した部分なのだと思っている。
 高校時代は,自分や目の前のことに必死で,自分を客観視する余裕もないし,それでも周囲に敏感になって,相手が自分をどう思っているのか気になる・・・そんなことの連続だった。でも,毎日同じことの繰り返しに思えても日々成長している。それが分かるのは後になってからのことで,今は先への見えない不安に押しつぶされそうになるかもしれない。そんな中でできることは,未来を信じ,今の自分を信じてあげることだと思う。
 感慨深くなって手紙を読んでいたが,ふと我に返り部屋を見渡せばもちろん部屋は散らかったまま。昔から掃除が長引いてしまうのも私の個性・・・?笑
                               

 
 「いじめ問題・悩みに関する調査」結果の概要    神田 美紀
  毎年この冬の号では,「いじめ問題・悩みに関する調査」の結果を報告しています。この調査は,教育相談課として長年継続的に実施しているものです。生徒の皆さんが「いじめ問題」についてどのように思っているか,また日々どのような思いや悩みを抱えて学校生活を送っているかを調査しています。その結果を共に考えることで,気づきや行動変容に結びつくことを期待しています。また,学校でも結果を全ての教員で共通理解を図り,様々な問題に迅速に対応できるよう協議しています。
問A 【いじめ・悩みについての質問】の結果 (抜粋)
☆全体的な傾向
 「体調をよく崩す」「勉強の仕方」「将来の見通し」「他人からの評価」の項目は,例年と同じく他項目と比べてややポイントが高くなっています。各学年も生徒の多くが勉強面や将来についての悩みを抱えており,一番の関心事であるだけに不安や焦りなどの気持ちも大きいようです。「体調をよく崩す」は3年生と1年生,「勉強の仕方」は1年生,「将来の見通し」は2年生と1年生のポイントが,他学年と比較するとやや高くなっています。
 また「友人関係」「学校へ行きたくない」「学校生活」で悩んでいる1年生の割合が,例年の調査の値よりもやや高い傾向にあります。また,2年生は「学校生活」「友人関係」で1年生時の調査よりも高いポイントになっていることが気になります。「勉強の仕方」や「将来の見通し」に対する不安は,学年が上がる毎に減少傾向にあります。
  「他人からの評価」の項目については,毎年どの学年でもポイントが高く,他人との関係の中で自意識が高まるのもこの年代では当然のことと言えます。
「問A」質問事項 3年 2年 1年
 a 生活のリズムが整わず,体調をよく崩す。 2.0 1.9 .2.0
 b 友人関係で悩むことがよくある。 1.7 1.8 1.8
 c 学校内に信頼して相談できる人がいない。 1.6 1.7 1.7
 d 勉強の仕方がわからず,集中できない。 2.1 2.2 2.3
 e 将来への見通しが立たず,気力が湧かない。 2.0 2.2 2.2
 f 学校に行きたくないとよく思う。 1.8 1.9 1.9
 g 私には友人がいない。付き合いがうまくいかない。 1.3 1.4 1.4
 h 私はいじめられている。 1.1 1.1 1.1
 i からかわれたり手を出されることがあり,いやだ。 1.2 1.3 1.3
 j 言葉や態度で傷つけられることがある。 1.3 1.4 1.4
 k クラスの中に改めるべき問題がある。 1.4 1.5 1.7
 l いじめたりいじめられたりしている人がいる。 1.2 1.2 1.3
 m 人が私をどう思っているのかとても気になる。 2.1 2.2 2.2
 n 私のことをわかってくれる人は一人もいない。 1.4 1.5 1.4
 o 家族は私に過剰に期待をかける。 1.7 1.7 1.7
 p 家族には,悩みがあっても相談できない。 1.7 1.7 1.7
 q 私の落ち着ける場所はない。 1.4 1.4 1.4
  1:あてはまらない 2:あまりあてはまらない 3:ややあてはまる 4:あてはまる 
                                           の4件法で回答し平均値を表す
☆友人関係の悩みについて
 思春期~青年期を迎え,心と身体の変化に自分自身とまどいながら,その不安定さの中で人間関係,勉強,進路のことなど,悩みは増える一方です。特に人間関係が広がる高校時代には仲間から嫌われていないか,友人といかに上手につきあうか,ということで不安に思っている実態がこの調査からも見えてきます。悩み苦しむことは,決してマイナスではなく精神的な成長のうえでは大切な過程です。自分で解決法を見いだしたり,自分の中で折り合いをつけたりしながら大人へと成長していくものです。他人との関係において自分をみつめ,自我の確立をしていくのが,この年代の特徴ともいえます。

☆いじめの実態について
  質問h~lまでがいじめに関連した項目であり,その数値は高くはないものの毎年皆無ではなく,いじめにつながるような「からかい」や「言葉の暴力」を含めると,本校にもいじめ問題は存在するということです。こういった行為は,軽い気持ちから何気なく行われているかもしれませんが,された方は想像以上に辛い気持ちになり傷ついているのだということがわかります。周囲の人もそのような場面を見たり聞いたりして不愉快な気持ちになり,クラスに改善すべき点があると答えていると思われます。

問B 【朝日高校に「いじめ」はありますか。あるとすればどのようなことですか】 について(自由記述)
 「知っている限りではない」「あまりない」「目撃したことはない」「知らない」が多数の意見でしたが,「軽いからかい」「陰口」「悪ふざけ」「冷笑」「特定の人を避ける」「LINEで少数のクラスメイトを排除したグループを作っている」「LINEによる言葉の暴力,急に退会させる」「相手の名前を伏せてSNSへ書き込みをする」など,いじめとも思える事ならたくさんあるという記述も1年生を中心にありました。閉ざされた人間関係の中で行われるSNS等でおこなわれるコミュニケーションは,相手の表情が見えないため,相手の感情を推し測ることが出来ず,一方通行のコミュニケーションになりがちです。SNSの中だけに逃げ込むのではなく,目の前の相手の表情や態度を見ながら,他者と向き合いお互いの信頼関係を築き,双方向のコミュニケーションをとってもらいたいと思います。

問C  【もしもいじめにあったり,悩んでいる友人がいたら,あなたはどうしますか】について(自由記述)
 「相談にのる」「一緒に改善策を考える」「積極的に話しかける」「両方の話を聞き仲裁をする」「先生や親に相談する」「孤立させない」「陰ながら手助けする」「いじめを許さない雰囲気を作る」など,解決について積極的な回答が例年以上に多くみられ,どの学年にも具体的な支援方法が多くあり,人権感覚の育ちを感じることができました。解決にむけて,多くの人が自分なりにできそうな事を考えて回答してくれたことを嬉しく思いました。この思いがクラス全体,学校全体に広がってくれることを期待しています。一方,「助けを求められたときのみ助ける」「自分がそれに巻き込まれないように気を付ける」「特に何もしない」「放置する」「自分で乗り越えるしかない」「できるだけ関わらない」といった傍観者的な回答も見られました。

問D  高校生の間でさかんに利用されているLINEの功罪について,あなたはどう思いますか
    (1年生のみ自由記述)

「 グループで遊び感覚で暴言を吐いたりして遊んでいるが,それはかなり仲が良い人同志の時だけで,多くはトラブルに繋がる。コミュニケーションを取る量は増えたが,文字だけなので質は低下した」「LINEよりTwitterの方が危ない」「“送信”のワンタッチで送られてしまうので,送る前にもっと内容を考えるべき」「簡単にできるから会話が続いてスマホが手放せなくなる」「功は情報を共有して学校生活が円滑に進むこと,罪はそれに夢中になってしまったり,人間関係のトラブルの芽になったりすること」「LINEを利用していないが,このまま利用しなくても十分だ」「個人の注意でトラブルは予防できる」等,数多くの意見が寄せられました。ネットコミュニケーションについて考えるきっかけになればと期待しています。
                               


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