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『相談課便り』第47号 コンテンツ
Never too late 永田 宏子
祖父のことわざ 橋本 美未
軽い・重い 信宮 優子
「いじめ問題・悩みに関する調査」結果の概要
神田 美紀
<平成28年12月発行>
 <表面>
 <裏面>

 Never too late  永田 宏子
 眠る前に何気なくスイッチを入れたNHKテレビで「アスリートの魂」をやっていた。今回の主人公は、田(た)臥(ぶせ)勇(ゆう)太(た)である。皆さんは、彼をご存じだろうか。田臥勇太は日本人初のNBAプロバスケットボールプレイヤーだ。高身長であることが絶対条件の一つであるバスケットボール選手のなかで、身長173センチの田臥勇太は、驚くべき身のこなしで相手選手を抜き去り、まったく見てもいない方向にパスを出し、2メートル近い大男たちを翻弄する。能代工業高校時代からその名を轟かせており、昔、活躍する様子をテレビで見ていたので、久しぶりに見る田臥勇太に「大きくなったなあ」と勝手な独りごとが口をついて出た。番組で流れるプレーは、相変わらず俊敏で小気味よく、切れている。その田臥がインタビュアーに「"Never too late." という言葉が好きなんです」と話していた。悩んでいた大学時代に友人からかけられた言葉だという。
 "Never too late." この言葉が頭の中に入ってくるや、私はもう田臥勇太のインタビューを聞いてはいなかった。頭の中で" Never too late." がグルグルと回り出す。まるで、私に向けて言われた言葉のように。
 3月のイギリス研修に同行しホームステイした家族とちゃんと会話を成立させることに難儀したことで、「う~ん、やっぱりちゃんと英語を勉強しないとだめだなあ。でも忙しいし、だいたいもういい年だし……」来年度から学校のパソコンで一太郎(ワープロソフト)が使えなくなるという。「えー、この年でWordを始めるわけ??今まで作ってきた膨大な一太郎文書をいちいちWordに変換しないといけないってこと? 面倒だあ……。何とか一太郎を使い続けられるようにならないのかなあ……」やればいいこと・やるべきことは頭ではわかっていても、「でも……でも……」とやらなくても済む言い訳を探しだし、とどのつまり「今更やったってだめなんじゃないの」と、やる前から自分を否定する自分がそこにいる。
 夜、帰宅したら伯父から色紙が届いていた。力強い筆運びで、来年の干支「酉」が金文で書いてある。伯父は92歳だ。今でも毎日書道の練習をし、上手くなろうとしているという。"Never too late."
 3年生・補習科生諸君、センター試験まであと1ケ月を切った。焦る気持ちがきっとどこかにあるだろう。「朝日祭の後、これをやっとけばよかった……」「いや、夏休みにこれを済ませておけば楽だったのに……」「いや、2年生の間にもうちょっとやっておけば……」「いやいや、1年生の時からその気だったら……」頭の中をさまざまな思いが堂々巡りしていないか? 後ろを振り返っては、悲しい気持ちになっていないか? 今からじゃ遅い、間に合わないと思っていないか? "Never too late."  まだやれる。まだまだやれるんだよ。今日から、今から、前だけを見て、あなたができる限りのことをすればいい。そうして1月14日、ひとつ深呼吸してセンター試験会場の椅子に座ろう。
 "Never too late." 今、私の通勤の車の中では英会話のCDが流れており、「うまくレイアウトできないなあ」とぼやきながらこの文章をWordで書いています。
      

 祖父のことわざ    橋本 美未
  尾道に住んでいた私の祖父は、いつもおもしろいことをいってはみんなを笑わせていた。子どもの頃はやんちゃな暴れん坊で、学校の先生が「やってはいけません」と言うことはすべてやったと自慢げに話していた。孫を引き連れて山に遊びに行き、木登りをしても一番高いところまで登るのは決まって祖父だった。木のてっぺんまで登ってゆらゆら揺れている祖父を下から仰ぎ見て、「おじいちゃん、危ないから早く降りて!」と冷や冷やしながら叫んだものだ。
 そんな祖父が小言を言うことはほとんどなかったが、私たちに何か教えようとするときには、ことわざのような、昔からおそらく祖父自身も言われてきたのであろう言葉を使って話した。  
 「親の意見となすびの花は千に一つも仇はない。」なすびの花が咲くとすべて実をつけるように、親が子を思って忠告することは必ず役に立つから親の意見をよく聞け―という意味のことわざだ。高校生、大学生の時に何度か言われた覚えがある。「親の言うことを聞け」と言われると、「なんで!」と反発したくなる。けれども、不思議と「なすびの花」はすっと胸に入ってくる。
 対人関係で困った時には、「『燠(おき)は火箸でいらえ』言うてな。燃えとる炭を手で掴んだらやけどするじゃろう。そういうときは火箸でつまむんよ。」とアドバイス。難しい人を前にしたとき呪文のように心で唱えてみると冷静になれる。
 「鳥も留まる時がある。」これは、祖父によるとタイミングが大切だということだそうだ。夜になって真っ暗になってしまうと鳥もどこに留まって休めばいいか分からなくなる。だから、真っ暗になってしまう前に木に留まって休まなければならない。その「時」を逃してはならない。飛ぶのをやめるのにも勇気がいるが、留まるべき「時」があるということだ。
 祖父亡き今でも、ふっと心にことわざが浮かんでくる。紫色の「なすび」に黄色いなすの花、真っ赤になった「燠(おき)」、暗闇の中の「鳥」。祖父の声とともに、豊かなイメージが私を導いてくれる。
                               

 軽い ・ 重い    信宮 優子 
 高校時代から15年ほど茶道をしていました。お点前(てまえ)で道具を扱う際、師匠はこんな風に教えてくださいました。「軽いものは重そうに、重いものは軽そうに持つと、きれいに持てます。」―「茶杓」という抹茶をすくう竹の匙がありますが、これを手に取る時は鉄製のように重々しく、そして湯が一杯入った鉄瓶を片手で持つときがありますが、これを手元に持ってくる時は、空の薬缶さながら軽やかに、という訳です。
 不思議なことに、指示通りに意識して扱うと、道具を丁寧に大切に美しく扱うことができるのです。見事な指示でした。
 先日、漱石の「三四郎」を読む番組が放映されましたが、番組中「美禰子(みねこ)の婚活として考えるとベストなお相手は?」というテーマで読書会がなされました。格調高い文学作品を軽妙なタッチで読む粋な切り口だと思いました。また、これも先日のことです。数学の模試で小問集合の計算ミス。「ケアレスミスですが、これも実力なので、重く受け止めています。」と朝日高校某君。
 重大な問題はもちろん重く捉えて考えねばなりません。しかし自ら「意識的に」違う観点(あえて「軽い」とは言いませんが)から眺めてみることは、その問題を「丁寧に大切に美しく扱う」ことにつながるような気がします。そして、「こんな些細なこと」と日頃見逃したり、あるいは切り捨てたりすることを「意識的に」深刻に受け止めることも、また然り。
 重責、苦労、心の痛み、ささいな言動、日々の瑣事。意識的に重い・軽いを取り換えることで、より「丁寧に大切に美しく」生きていけるかもしれないと思っています。苦しい時に悠々と、小さなことを大切に、そんな風に日々を送っている方々は身近にたくさんいらっしゃり、心魅かれることが多いものです。
 出産後、稽古に行かなくなり15年。熱心な弟子でもなかったし、他の方ほど深い御縁があった訳でもありませんでした。ですが、師匠の葬儀で一粒涙が流れました。小さな軽い滴ではありましたが、重々しく心を震わせたことでした。




 
 「いじめ問題・悩みに関する調査」結果の概要    神田 美紀
  毎年この冬の号では,「いじめ問題・悩みに関する調査」の結果を報告しています。この調査は,教育相談課として長年継続的に実施しているものです。生徒の皆さんが「いじめ問題」についてどのように思っているか,また日々どのような思いや悩みを抱えて学校生活を送っているかを調査しています。その結果を共に考えることで,気づきや行動変容に結びつくことを期待しています。また,学校でも結果を全ての教員で共通理解を図り,様々な問題に迅速に対応できるよう協議しています。
問A 【いじめ・悩みについての質問】の結果 (抜粋)
☆全体的な傾向
 「体調をよく崩す」「勉強の仕方」「将来の見通し」「他人からの評価」の項目は,例年と同じく他項目と比べてややポイントが高くなっていますが,調査開始から初めて「学校に行きたくない」の項目で,3年生と2年生のポイントが高くなっています。両学年とも「学校に行きたくない」と回答した人が年々増えています(3年生1.8→1.8→2.0)(2年生1.9→2.0)。3年生は,「体調をよく崩す」(1.9→1.9→2.1),「友人がいない」(1.3→1.4→1.5)の2項目も増えており,心身の体調管理や友人関係の構築が上手くいかないため,学校から気持ちが遠ざかっているのかもしれません。 また「勉強の仕方」は2年生と1年生,「将来の見通し」は2年生と1年生のポイントが,他学年と比較するとや高くなっています。「勉強の仕方」や「将来の見通し」に対する不安は,例年学年が上がる毎に減少傾向にありますが,2年生は両項目とも1年生の時と同じくらいポイントが高く,このことが「学校に行きたくない」と感じる要因になっているのかもしれません。
 「他人からの評価」の項目については,毎年どの学年でもポイントが高く,他人との関係の中で自意識が高まるのも この年代では当然のことと言えます。
 全体的には各学年も生徒の多くが勉強面や将来についての悩みを抱えており,一番の関心事であるだけに不安や焦りなどの気持ちも大きいようです。
「問A」質問事項 3年 2年 1年
 a 生活のリズムが整わず,体調をよく崩す。 2.1 1.9 .2.0
 b 友人関係で悩むことがよくある。 1.8 1.8 1.8
 c 学校内に信頼して相談できる人がいない。 1.7 1.6 1.7
 d 勉強の仕方がわからず,集中できない。 2.1 2.3 2.3
 e 将来への見通しが立たず,気力が湧かない。 2.1 2.2 2.2
 f 学校に行きたくないとよく思う。 2.0 2.0 1.9
 g 私には友人がいない。付き合いがうまくいかない。 1.5 1.4 1.3
 h 私はいじめられている。 1.1 1.1 1.1
 i からかわれたり手を出されることがあり,いやだ。 1.3 1.3 1.3
 j 言葉や態度で傷つけられることがある。 1.4 1.4 1.4
 k クラスの中に改めるべき問題がある。 1.3 1.5 1.5
 l いじめたりいじめられたりしている人がいる。 1.2 1.3 1.2
 m 人が私をどう思っているのかとても気になる。 2.1 2.2 2.2
 n 私のことをわかってくれる人は一人もいない。 1.5 1.5 1.3
 o 家族は私に過剰に期待をかける。 1.7 1.7 1.6
 p 家族には,悩みがあっても相談できない。 1.7 1.8 1.7
 q 私の落ち着ける場所はない。 1.4 1.4 1.3
  1:あてはまらない 2:あまりあてはまらない 3:ややあてはまる 4:あてはまる 
                                           の4件法で回答し,平均値を表す
☆友人関係の悩みについて
 思春期~青年期を迎え,心と身体の変化に自分自身とまどいながら,その不安定さの中で人間関係,勉強,進路のことなど,悩みは増える一方です。特に人間関係が広がる高校時代には仲間から嫌われていないか,友人といかに上手につきあうか,ということで不安に思っている実態がこの調査からも見えてきます。悩み苦しむことは,決してマイナスではなく精神的な成長のうえでは大切な過程です。自分で解決法を見いだしたり,自分の中で折り合いをつけたりしながら大人へと成長していくものです。他人との関係において自分をみつめ,自我の確立をしていくのが,この年代の特徴ともいえます。

☆いじめの実態について
  質問h~lまでがいじめに関連した項目であり,その数値は高くはないものの毎年皆無ではなく,いじめにつながるような「からかい」や「言葉の暴力」を含めると,本校にもいじめ問題は存在するということです。こういった行為は,軽い気持ちから何気なく行われているかもしれませんが,された方は想像以上に辛い気持ちになり傷ついているのだということがわかります。周囲の人もそのような場面を見たり聞いたりして不愉快な気持ちになり,クラスに改善すべき点があると答えていると思われます。

問B 【朝日高校に「いじめ」はありますか。あるとすればどのようなことですか】 について(自由記述)
 「知っている限りではない」「あまりない」「目撃したことはない」「知らない」が多数の意見でしたが,「成績やテストの点数でからかい」「過剰ないじり・からかい」「無意識のいじり」「悪口」「特定の人を避ける」「LINEで悪口を言う」「TwitterなどSNSで俗に言う裏アカウントで悪口を言う」「相手の名前を伏せてSNSへ書き込みをする」など,いじめとも思える事ならたくさんあるという記述が各学年ありました。閉ざされた人間関係の中で行われるSNS等でおこなわれるコミュニケーションは,相手の表情が見えないため,相手の感情を推し測ることが出来ず,一方通行のコミュニケーションになりがちです。SNSの中だけに逃げ込むのではなく,目の前の相手の表情や態度を見ながら,他者と向き合いお互いの信頼関係を築き,双方向のコミュニケーションをとってもらいたいと思います。

問C  【もしもいじめにあったり,悩んでいる友人がいたら,あなたはどうしますか】について(自由記述)
 「相談にのる」「一緒に改善策を考える」「積極的に話しかける」「両方の話を聞き仲裁をする」「先生や親に相談する」「孤立させない」「陰ながら手助けする」「いじめを許さない雰囲気を作る」など,解決について積極的な回答が例年以上に多くみられ,どの学年にも具体的な支援方法が多くあり,人権感覚の育ちを感じることができました。解決にむけて,多くの人が自分なりにできそうな事を考えて回答してくれたことを嬉しく思いました。この思いがクラス全体,学校全体に広がってくれることを期待しています。一方,「助けを求められたときのみ助ける」「自分がそれに巻き込まれないように気を付ける」「特に何もしない」「放置する」「自分で乗り越えるしかない」「できるだけ関わらない」といった傍観者的な回答も見られました。
 いじめの構造は、○いじめる生徒,○観衆(はやしたてたり、おもしろがったりして見ている),○傍観者(見て見ない振りをする),○いじめられる生徒の4層で成り立っていると言われています。『いじめの4層構造』森田洋司1986年』森田氏によると,いじめの持続や拡大には,いじめる生徒といじめられる生徒以外の「観衆」や「傍観者」の立場にいる生徒が大きく影響していて,「観衆」はいじめを積極的に是認し,「傍観者」はいじめを暗黙的に支持しいじめを促進する役割を担っているとされています。
 朝日高生のみなさんは、いじめを許さないという人権感覚をさらに養ってほしいと願っています。
                               


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