毎年この冬の号では,「いじめ問題・悩みに関する調査」の結果を報告しています。この調査は,教育相談課として長年継続的に実施しているものです。生徒の皆さんが「いじめ問題」についてどのように思っているか,また日々どのような思いや悩みを抱えて学校生活を送っているかを調査しています。その結果を共に考えることで,気づきや行動変容に結びつくことを期待しています。また,学校でも結果を全ての教員で共通理解を図り,様々な問題に迅速に対応できるよう協議しています。
問A 【いじめ・悩みについての質問】の結果 (抜粋) ☆全体的な傾向
「体調をよく崩す」「勉強の仕方」「将来の見通し」「他人からの評価」の項目は,例年と同じく他項目と比べてややポイントが高くなっていますが,調査開始から初めて「学校に行きたくない」の項目で,3年生と2年生のポイントが高くなっています。両学年とも「学校に行きたくない」と回答した人が年々増えています(3年生1.8→1.8→2.0)(2年生1.9→2.0)。3年生は,「体調をよく崩す」(1.9→1.9→2.1),「友人がいない」(1.3→1.4→1.5)の2項目も増えており,心身の体調管理や友人関係の構築が上手くいかないため,学校から気持ちが遠ざかっているのかもしれません。 また「勉強の仕方」は2年生と1年生,「将来の見通し」は2年生と1年生のポイントが,他学年と比較するとや高くなっています。「勉強の仕方」や「将来の見通し」に対する不安は,例年学年が上がる毎に減少傾向にありますが,2年生は両項目とも1年生の時と同じくらいポイントが高く,このことが「学校に行きたくない」と感じる要因になっているのかもしれません。
「他人からの評価」の項目については,毎年どの学年でもポイントが高く,他人との関係の中で自意識が高まるのも この年代では当然のことと言えます。
全体的には各学年も生徒の多くが勉強面や将来についての悩みを抱えており,一番の関心事であるだけに不安や焦りなどの気持ちも大きいようです。
「問A」質問事項 |
3年 |
2年 |
1年 |
a 生活のリズムが整わず,体調をよく崩す。 |
2.1 |
1.9 |
.2.0 |
b 友人関係で悩むことがよくある。 |
1.8 |
1.8 |
1.8 |
c 学校内に信頼して相談できる人がいない。 |
1.7 |
1.6 |
1.7 |
d 勉強の仕方がわからず,集中できない。 |
2.1 |
2.3 |
2.3 |
e 将来への見通しが立たず,気力が湧かない。 |
2.1 |
2.2 |
2.2 |
f 学校に行きたくないとよく思う。 |
2.0 |
2.0 |
1.9 |
g 私には友人がいない。付き合いがうまくいかない。 |
1.5 |
1.4 |
1.3 |
h 私はいじめられている。 |
1.1 |
1.1 |
1.1 |
i からかわれたり手を出されることがあり,いやだ。 |
1.3 |
1.3 |
1.3 |
j 言葉や態度で傷つけられることがある。 |
1.4 |
1.4 |
1.4 |
k クラスの中に改めるべき問題がある。 |
1.3 |
1.5 |
1.5 |
l いじめたりいじめられたりしている人がいる。 |
1.2 |
1.3 |
1.2 |
m 人が私をどう思っているのかとても気になる。 |
2.1 |
2.2 |
2.2 |
n 私のことをわかってくれる人は一人もいない。 |
1.5 |
1.5 |
1.3 |
o 家族は私に過剰に期待をかける。 |
1.7 |
1.7 |
1.6 |
p 家族には,悩みがあっても相談できない。 |
1.7 |
1.8 |
1.7 |
q 私の落ち着ける場所はない。 |
1.4 |
1.4 |
1.3 |
1:あてはまらない 2:あまりあてはまらない 3:ややあてはまる 4:あてはまる
の4件法で回答し,平均値を表す
☆友人関係の悩みについて
思春期~青年期を迎え,心と身体の変化に自分自身とまどいながら,その不安定さの中で人間関係,勉強,進路のことなど,悩みは増える一方です。特に人間関係が広がる高校時代には仲間から嫌われていないか,友人といかに上手につきあうか,ということで不安に思っている実態がこの調査からも見えてきます。悩み苦しむことは,決してマイナスではなく精神的な成長のうえでは大切な過程です。自分で解決法を見いだしたり,自分の中で折り合いをつけたりしながら大人へと成長していくものです。他人との関係において自分をみつめ,自我の確立をしていくのが,この年代の特徴ともいえます。
☆いじめの実態について
質問h~lまでがいじめに関連した項目であり,その数値は高くはないものの毎年皆無ではなく,いじめにつながるような「からかい」や「言葉の暴力」を含めると,本校にもいじめ問題は存在するということです。こういった行為は,軽い気持ちから何気なく行われているかもしれませんが,された方は想像以上に辛い気持ちになり傷ついているのだということがわかります。周囲の人もそのような場面を見たり聞いたりして不愉快な気持ちになり,クラスに改善すべき点があると答えていると思われます。
問B 【朝日高校に「いじめ」はありますか。あるとすればどのようなことですか】 について(自由記述)
「知っている限りではない」「あまりない」「目撃したことはない」「知らない」が多数の意見でしたが,「成績やテストの点数でからかい」「過剰ないじり・からかい」「無意識のいじり」「悪口」「特定の人を避ける」「LINEで悪口を言う」「TwitterなどSNSで俗に言う裏アカウントで悪口を言う」「相手の名前を伏せてSNSへ書き込みをする」など,いじめとも思える事ならたくさんあるという記述が各学年ありました。閉ざされた人間関係の中で行われるSNS等でおこなわれるコミュニケーションは,相手の表情が見えないため,相手の感情を推し測ることが出来ず,一方通行のコミュニケーションになりがちです。SNSの中だけに逃げ込むのではなく,目の前の相手の表情や態度を見ながら,他者と向き合いお互いの信頼関係を築き,双方向のコミュニケーションをとってもらいたいと思います。
問C 【もしもいじめにあったり,悩んでいる友人がいたら,あなたはどうしますか】について(自由記述)
「相談にのる」「一緒に改善策を考える」「積極的に話しかける」「両方の話を聞き仲裁をする」「先生や親に相談する」「孤立させない」「陰ながら手助けする」「いじめを許さない雰囲気を作る」など,解決について積極的な回答が例年以上に多くみられ,どの学年にも具体的な支援方法が多くあり,人権感覚の育ちを感じることができました。解決にむけて,多くの人が自分なりにできそうな事を考えて回答してくれたことを嬉しく思いました。この思いがクラス全体,学校全体に広がってくれることを期待しています。一方,「助けを求められたときのみ助ける」「自分がそれに巻き込まれないように気を付ける」「特に何もしない」「放置する」「自分で乗り越えるしかない」「できるだけ関わらない」といった傍観者的な回答も見られました。
いじめの構造は、○いじめる生徒,○観衆(はやしたてたり、おもしろがったりして見ている),○傍観者(見て見ない振りをする),○いじめられる生徒の4層で成り立っていると言われています。『いじめの4層構造』森田洋司1986年』森田氏によると,いじめの持続や拡大には,いじめる生徒といじめられる生徒以外の「観衆」や「傍観者」の立場にいる生徒が大きく影響していて,「観衆」はいじめを積極的に是認し,「傍観者」はいじめを暗黙的に支持しいじめを促進する役割を担っているとされています。
朝日高生のみなさんは、いじめを許さないという人権感覚をさらに養ってほしいと願っています。
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