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『相談課便り』第51号 コンテンツ
地図を通して見えるもの 竹内 直志
占い本 松北 高行
烏城を望む踊り場から 小網 晴男
「いじめ問題・悩みに関する調査」結果の概要
神田 美紀
<平成29年12月発行>
 <表面>
 <裏面>

 地図を通して見えるもの  竹内 直志
 仕事柄か、地図に触れる機会が多く、地図を見ることがいつの間にか好きになった。地図を見ていると知らぬ間に時間が経過していることもよくある。そして、時には気になる地域の地図を手に出歩くこともある。「ブラタモリ」というNHKの番組があるが、タモリが古地図など色んな地図を手に日本各地を旅して散策するのと同じような感覚である。地図と現地を見比べながら自分の足でゆっくりと歩き、初めて発見したものがあれば感動する。大地の緩やかな傾斜やアップダウン、名所旧跡を知らせる道標、地図に表記されていない裏道などなど。私にとって知的な生活を営む上でなくてはならない地図を通して見えるものを紹介してみたい。
 本校理科棟2階の社会科準備室を入った所にある2番目の棚に、少々埃をかぶった伊能忠敬の「大日本沿海輿地全図」中図復刻版がある。この地図は日本国際地図学会の創立30周年を記念して発行されたものであるが、「大日本沿海輿地全図」の原図(残念ながら原図は焼失しており写しであったと思う)を国立民族博物館で見たときの感動を今でも覚えている。1821年に完成したこの地図は実測図で、よくぞまあ、歩測と簡便な測量機材だけで、現在とほぼ変わらない経緯線入りの地図を描けたものだと感心させられる。正確な日本地図を作成するという伊能の執念というか使命感を読み取れる大作である。伊能は50歳になって独り地図づくりのノウハウを身につけ、地図作成に取りかかった。地球の大きさを測定することに始まり経緯度の測定法に至るまですべて独学であった。そして、何よりも日本の海岸線を隈無く歩きながら測量し、記録する中で点と点を結び日本の輪郭を完成させていくという途方も無い作業を積み重ねた。一歩一歩の軌跡の積み重ねが線となり日本の輪郭となったわけで、一歩でも欠けていたら完成には至っていない。もの凄い作業である。単純な一歩、一歩の積み重ねが大きな実になるわけだ。是非、伊能の執念が形になった地図を社会科準備室に見に来てほしいと思う。
 それから、地図には様々な道が描かれている。同じ山頂に至る道も色々ある。例えば、富士山頂に向かう道には「吉田ルート」、「富士宮ルート」、「須走ルート」、「御殿場ルート」の4つがあり、それぞれに特徴がある。登山者の体力や興味、さらには経験などによってルートを選択するが、ポピュラーな道は富士山のほぼ北側からスタートし、北東斜面を登る「吉田ルート」である。標高差1450m、往復距離14km、吉田口頂上までの所要時間は6時間ほどである。登山道が整備されている上に山小屋や売店が多く体力に自信のない人や初心者には安心して登山できる。私のお勧めは、常に目標となる山頂を見ながら短時間、短距離で登れる「富士宮ルート」である。富士宮頂上までの標高差1350mを所要時間5時間で一気に登り詰める。平均斜度18.2°もあり、短距離で高度を稼いで登るので高山病を発症する人も少なくないが、下山時には駿河湾に引きこまれるようなスリルが味わえる。「吉田ルート」を簡単に制覇できた人はチャレンジしてみてほしい。富士山の地図を眺めてみるとそれぞれの道の特徴が見えて飽きないものである。同じ山頂を目指すにしてもどの道を選ぶかで目に飛び込んでくる風景や登山者の息づかいまでもが違って想像できる。実際に選択する道によって感じるもの、見える風景は全く異なってくる。
 人生にもいろいろな道があるはずである。同じ一つの目標地点に到達する道は登山と同じように色々ある。色々ある道の中から自分に合った道を選択し、黙々と進む。選択した道が自分に合わない道であれば、引き返して別の道を選択すれば良い。地図を広げて眺めて見れば、目標地点に到達できる道は決して一本でない。新たに見つけた道を勇気を出して踏み出せるかどうかが目標地点に到達できるチャンスになる。地図は道案内である。少し大げさかもしれないが、地図は人生の道をも気づかせてくれる道案内である。一枚の紙切れに過ぎない地図を手に自分の知らない世界に一歩、また一歩踏みだしていきたいものである。
      

 占い本    松北 高行
  占いって信じますか?少なくとも関心くらいはありますよね。
私は本屋の立ち読みレベルです。笑い話の小ネタにはもってこいだと感じる。時には、「なるほど」と感心させられてしまう占い本もある。ヒトをあるカテゴリーに基づいて分類し、会ったこともない読者に対して「ああだ、こうだ」と記述している。典型的な例を挙げながら上手に読者を持ち上げ、筆者ワールドへの共感の扉を開けさせている。ちょっと笑えるが、自分の行いを正当化するにはうってつけの理解者だ。全体運から始まり、恋愛運、仕事運、金運、健康運、etc・・・。
 占うだけではなく、運気を上げる具体的な方法まで示してある本も少なくない。例えば、『 背筋を伸ばしなさい。普段は猫背だったり姿勢が崩れていても、1日1回でいいから背筋を伸ばして姿勢を正すと、心が静まる。気分がよくなるということは、運気がよくなるということでもある。そして、「肩をまわす」「深呼吸をする」といった“気分をポジティブに変化させる動作”を合わせて行う習慣をつけると穏やかな気持ちになって運気は上昇する。』 うーん、なるほど。
 『 チョコレートを食べましょう。成功者や強運のひとは“チョコレート好き”の人が多い。誰でも簡単にマネできて、確実に効果を発揮してくれるのは、チョコレートを食べるのがよい。食べると気持ちが和らぐのも確かなので、落ち込んだときは特にチョコレートを食べるとよい。』 甘い物好きの方には受け入れられるかも・・。 いずれにせよ、自分に合った(と感じられる)占い本は、普段何となく抱えている小さな悩みや、もやもやを癒やしてくれたり解決のヒントを与えてくれたりする憩いの場所の様に感じられる。
 もうすぐ新年。初詣の楽しみと言えば、“おみくじ”。ちょっとドキドキしながら封を解くあの瞬間がいい。 これは と思うことはよくおがんでいただきましょう。他力本願大いに結構。
 来年も皆さんにとって良い年でありますように。
                               

 烏城を望む踊り場から    小網 晴男 
 花梨,栃,銀杏,椎,椚,楢,楠,梔,椿,栴檀,メタセコイア等,実を付ける樹木の多さに驚かされた10年間。花をつけ,操山に生息する共生相手にシグナルを送る。操山から飛来した多様な鳥類が受粉を助け,そして,樹木たちは子孫を残す。一方,3億年以上前から続く風の力を利用した受粉により,子孫を残すものもいる。
人々は,「古い歴史と伝統」,「日本でも有数のまなびの場」等,様々な形容を「岡山朝日」の前に置く。しかし,私にとっての「岡山朝日」は,数多くの不思議を提供し,私にまなびを促す神秘的な時空でもある。未来の夢実現のために,君たちひとりひとりが定めたルーチンの中に少し遊びを持たせることはできないだろうか? 君たちがこの時空の好きな位置に立ち,心を静めて回りを眺めてみよう。きっと,多弁な時空は,君たちにまなびを促す神秘を見せてくれるはず。例えば,東西方向からずれた校舎群と50年以上前のネコの生痕化石とかを。
 


 
 「いじめ問題・悩みに関する調査」結果の概要    神田 美紀
  毎年この冬の号では,「いじめ問題・悩みに関する調査」の結果を報告しています。この調査は,教育相談課として長年継続的に実施しているものです。生徒の皆さんが「いじめ問題」についてどのように思っているか,また日々どのような思いや悩みを抱えて学校生活を送っているかを調査しています。その結果を共に考えることで,気づきや行動変容に結びつくことを期待しています。また,学校でも調査結果を全ての教員で共通理解を図り,様々な問題に迅速に対応できるよう協議しています。
問A 【いじめ・悩みについての質問】の結果 (抜粋)
☆全体的な傾向・各学年の特徴
 「体調をよく崩す」「勉強の仕方」「将来の見通し」「学校へ行きたくない」「他人からの評価」の項目は,各学年とも例年と同じく他項目と比べてややポイントが高くなっています。全体的には各学年も生徒の多くが勉強面や将来についての悩みを抱えており,一番の関心事であるだけに不安や焦りなどの気持ちも大きいようです。他者との関係の中で自意識が高まるので,「他者からの評価」のポイントが高くなっています。
 1年生は,体調はあまり崩すことなく学校生活を過ごしているようですが,「勉強の仕方」「将来の見通し」の不安が高く,「他人からの評価」が気になっているのが特徴です。新しい人間関係の中で,勉強・進路に悩んでいるようです。 2年生は,「学校へ行きたくないとよく思う」「学校内に信頼して相談できる人がいない」と答えた生徒が,1年時より増加しているのが特徴です。心身の体調管理や友人関係の構築が上手くいかないため,学校から気持ちが遠ざかっているのかもしれません。
 3年生は,1・2年時と比較すると「勉強の仕方」「クラスの中に改めるべき問題」「他者からの評価」の項目に関する不安や悩みが減少しているのが特徴です。一方「家族や友人」に悩みを相談できると答えた人が増加していることから,友人や家族に相談することで,勉強・進路・人間関係の不安が軽減されていると推察されます。
「問A」質問事項 3年 2年 1年
 a 生活のリズムが整わず,体調をよく崩す。 1.9
2.0 1.8
 b 友人関係で悩むことがよくある。 1.7 1.8 1.8
 c 学校内に信頼して相談できる人がいない。 1.6 1.8 1.6
 d 勉強の仕方がわからず,集中できない。 2.1 2.2 2.3
 e 将来への見通しが立たず,気力が湧かない。 2.0 2.2 2.3
 f 学校に行きたくないとよく思う。 1.9 2.0 1.8
 g 私には友人がいない。付き合いがうまくいかない。 1.3 1.4 1.3
 h 私はいじめられている。 1.1 1.1 1.1
 i からかわれたり手を出されることがあり,いやだ。 1.2 1.2 1.2
 j 言葉や態度で傷つけられることがある。 1.3 1.3 1.3
 k クラスの中に改めるべき問題がある。 1.3 1.4 1.7
 l いじめたりいじめられたりしている人がいる。 1.2 1.2 1.3
 m 人が私をどう思っているのかとても気になる。 2.0 2.0 2.1
 n 私のことをわかってくれる人は一人もいない。 1.4 1.5 1.4
 o 家族は私に過剰に期待をかける。 1.5 1.6 1.7
 p 家族には,悩みがあっても相談できない。 1.6 1.6 1.7
 q 私の落ち着ける場所はない。 1.3 1.4 1.4
  1:あてはまらない 2:あまりあてはまらない 3:ややあてはまる 4:あてはまる 
                                           の4件法で回答し,平均値を表す
☆友人関係の悩みについて
 思春期~青年期を迎え,心と身体の変化に自分自身とまどいながら,その不安定さの中で人間関係,勉強,進路のことなど,悩みは増える一方です。特に人間関係が広がる高校時代には仲間から嫌われていないか,友人といかに上手につきあうか,ということで不安に思っている実態がこの調査からも見えてきます。悩み苦しむことは,決してマイナスではなく精神的な成長のうえでは大切な過程です。自分で解決法を見いだしたり,自分の中で折り合いをつけたりしながら大人へと成長していくものです。他人との関係において自分をみつめ,自我の確立をしていくのが,この年代の特徴ともいえます。

☆いじめの実態について
  質問h~lまでがいじめに関連した項目であり,その数値は高くはないものの毎年皆無ではなく,いじめにつながるような「からかい」や「言葉の暴力」を含めると,本校にもいじめ問題は存在するということです。こういった行為は,軽い気持ちから何気なく行われているかもしれませんが,された方は想像以上に辛い気持ちになり傷ついているのだということがわかります。周囲の人もそのような場面を見たり聞いたりして不愉快な気持ちになり,クラスに改善すべき点があると答えていると思われます。

問B 【朝日高校に「いじめ」はありますか。あるとすればどのようなことですか】 について(自由記述)
 「知っている限りではない」「あまりない」「目撃したことはない」「知らない」が多数の意見でしたが,「自転車や持ち物に対するいたずら」「成績やテストの点数でからかい」「行き過ぎたふざけがある」「軽い無視」「いじられキャラが存在する」「LINE等で顔写真を編集したものを回したりする人がいる」など,いじめとも思える事ならたくさんあるという記述が各学年ありました。閉ざされた人間関係の中で行われるSNS等でおこなわれるコミュニケーションは,相手の表情が見えないため,相手の感情を推し測ることが出来ず,一方通行のコミュニケーションになりがちです。SNSの中だけに逃げ込むのではなく,目の前の相手の表情や態度を見ながら,他者と向き合いお互いの信頼関係を築き,双方向のコミュニケーションをとってもらいたいと思います。

問C  【もしもいじめにあったり,悩んでいる友人がいたら,あなたはどうしますか】について(自由記述)
 「相談にのる」「一緒に改善策を考える」「積極的に話しかける」「両方の話を聞き仲裁をする」「先生や親に相談する」「孤立させない」「陰ながら手助けする」「いじめを許さない雰囲気を作る」「体調を崩して学校に来ることが出来ない子が、毎日元気に学校へ来られるようになって欲しい」など,解決について積極的な回答が例年以上に多くみられ,どの学年にも具体的な支援方法が多くあり,人権感覚の育ちを感じることができました。解決にむけて,多くの人が自分なりにできそうな事を考えて回答してくれたことを嬉しく思いました。この思いがクラス全体,学校全体に広がってくれることを期待しています。一方,「助けを求められたときのみ助ける」「自分がそれに巻き込まれないように気を付ける」「特に何もしない」「放置する」「自分で乗り越えるしかない」「できるだけ関わらない」といった傍観者的な回答も見られました。
 いじめの構造は、○いじめる生徒,○観衆(はやしたてたり、おもしろがったりして見ている),○傍観者(見て見ない振りをする),○いじめられる生徒の4層で成り立っていると言われています。『いじめの4層構造』森田洋司1986年』森田氏によると,いじめの持続や拡大には,いじめる生徒といじめられる生徒以外の「観衆」や「傍観者」の立場にいる生徒が大きく影響していて,「観衆」はいじめを積極的に是認し,「傍観者」はいじめを暗黙的に支持しいじめを促進する役割を担っているとされています。
 朝日高生のみなさんは、いじめを許さないという人権感覚をさらに養ってほしいと願っています。
                               


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