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『相談課便り』第12号 コンテンツ
「ピアサポート」活動の取り組み
自分の息に耳を傾けること 長屋智子
きっと届く!〜補習科生がくれたもの〜 大西由美
<平成20年3月発行>
 <表面>
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 <裏面>

 
 「ピアサポート」活動の取り組み
 19年度朝日高校では、後期生徒保健委員会と希望者を募ってピア・サポートの取り組みを行いました。この活動はNHKの番組でも取り上げられ、たくさんの反響をいただきました。この活動は来年度にもつなげていきたいと考えています。その取り組みの内容を紹介します。
◆ピアサポートとは?
 ピア(Peer=仲間)サポート(Support=支援)は、生徒の中に他者支援の力を育て、活用する取り組みです。さまざまなトレーニングによって成長した生徒たちが、日常生活の中でサポート活動を行い、日常生活における人間関係を豊かにしたり、課題を解決したりするとともに、あたたかい学校風土づくりの一端を担います。
 ピアサポートはカナダやアメリカ、イギリスなどの学校で発展し、今では多くの国々に広まっています。日本には1990年代に紹介され、小・中学校を中心に全国各地の学校で実践されるようになりましたが、高校での実践はあまり多くありません。岡山県でも実践校が少しずつ増えてきていますが、まだ少数です。

テ ー マ 活 動 の ね ら い







 ガイダンス ピアサポートについて概要を理解する。
 人間関係づくり 参加者の交流を深め、信頼関係を築く。
 コミュニケーション・スキル サポートの基本となる、コミュニケーション・スキルを学ぶ。
 自己理解 自己理解を深めることによって、自分の対人関係の特徴をつかむ。
 対立の解決 対立している人の間に立って仲裁するための方法を学ぶ。







 個人プランニング 日常生活の中でどのような仲間支援が可能であるか考え、具体的な計画を立てる。
 フォローアップセッション@ 仲間支援を行った生徒たちが定期的に集まり、活動内容を報告したり、改善点を話し合ったりしながら、次の活動につなげる。
 フォローアップセッションA 仲間支援を行った生徒たちが定期的に集まり、活動内容を報告したり、改善点を話し合ったりしながら、次の活動につなげる。
 フォローアップセッションBと反省会 活動全体の振り返り。来年度に向けて。
◆ピアサポートがめざすもの
 このプログラムに参加した生徒は、トレーニングを受けることで、他者支援のための資質や能力を身につけました。また、サポートのためのスキルを身につけるだけでなく、この活動を一緒にしている仲間と交流することで、自己理解・他者理解をはかったり、人間関係を学んだりしました。そして、サポート活動をする過程で、自分がだれかのために、あるいは自分の所属する集団のために役立つ経験を積んだり、うまくいかなかった点を修正したりすることで、さらにいろいろな経験を積むことができました。
 一つひとつのサポート活動はささやかなことであっても、これらの地道な活動が、やがては学校の中に一層の共感的であたたかい雰囲気をつくることにつながっていくことを願っています。
◆実際に行ったサポート活動
友達の話をよく聴く。相談にのる。
積極的にあいさつする。
一人でいる友達に声をかける。お弁当を一緒に食べる。
毎朝教室の換気をし、加湿器に水を入れる。
ピアサポートの広報活動(ポスター・ニュースレター)をする。

 
 自分の息に耳を傾けること   長屋 智子
 こんな文章を読みました。
「人生とは、一言で言うなら何でしょう」と尋ねられたある尼さんが、「一息、一息、息をすることが人生なのよ」と答えていた。確かに、生きているということは、息をしていることである。具体的に言えば、息を吸う、そして吐く。その時悲しい息をしていたり、さわやかな息をしていたり、または希望に満ちた息をしていたり、ため息をついていたり・・・良い息だったり悪い息だったり。そしてそのトータルが私たちの人生である。
 意識して朝日の生徒達を見てみると、ワクワクした気持ちを伝えに息を弾ませてくる子、ドアを閉めた途端に大きなため息をつく子。胸が詰まったように苦しい息しかできない子。色々な息をしていました。
 自分はどんな息をしているか・・・自分の身体の声に耳を傾けることは、忙しく毎日を過ごしていると意識しなくなります。保健室でも、頭が痛いと来室した生徒に「何で頭が痛いんだろう?原因はなんだろうね」と尋ねても、「分からない」と一言だけ返ってくることがほとんどです。精一杯な子ども達になんとかほっこりとした時間や気持ちがひょっこりプレゼントされないかしらと思います。がんばっているね、と言ってあげることが、唯一今の私に出来ることです。

 
 きっと届く! 〜補習科生がくれたもの〜   大西由美
 春よ来い、早く来い…
 3年生のみなさんは、この春がどんなに待ち遠しかったことでしょう。望んだとおりに桜咲く春を迎えられたみなさんは、本当によかったですね。おめでとうございます。自分の努力が実を結んだのですから、どうぞしっかり頑張った自分をほめてください。それから、今、心に深く感じている、先生方のご恩に対する感謝の気持ちと、今日まで何物にも代え難い愛情で、みなさんを支え励まし、見守り続けてくださったご家族への言葉にならないありがとうの気持ちを、決して忘れないでくださいね。新しい世界でしっかり活躍すること…それが何よりのご恩返しです。どうぞ、お元気で、お幸せに。
◆18歳の挫折◆
 私は、昨春(平成19年)、補習科生120人の担任になりました。ご存知の通り、補習科生は、現役で大学に進学できなかった(しなかった)生徒たちです。望んだ春が来ない…その辛さ、悔しさ、情けなさは本当に二度と経験したくないほどの厳しいものだったようです。「自分の努力が足りなかったのだから、仕方ありません、当然の結果です…」と笑ってみせるのですが、その引きつった笑顔の底にある、暗く重い挫折感は私には伝わってきました。なかには面談している最中に「ごめんなさい、ごめんなさい」と涙を流す生徒もいました。家族や先生方の思いが身にしみているからこそ、流れた涙だったのでしょう。18歳で初めて味わった大きな挫折感。ひとりひとり高さは違うけれど彼らの心のなかに大きな壁がある…。それと向き合うことが補習科生との一年の始まりでした。
◆黙々徹底◆
 補習科には「捲土重来」という勇ましい言葉が掲げられています。一度敗れたものが巻き返しをはかるという意味です。しかし、私はこの言葉が個人的に好きではありません。原典ではあまりよい文脈で使われていないし、受験は勝ち負けではなく、彼らは敗北者でもないと思うからです。そこで私は、一緒に担任する先生方と相談して「黙々徹底」という合い言葉を設定しました。「黙ってやり抜く」ということ。自分の壁に正面から向き合い、何が足りなかったのか、どうするべきかを冷静に分析し、方針を設定し、黙ってやり抜く。そういう強さを身につけて欲しいと考えました。自分に向き合うことから逃げていては進歩はありません。受験勉強だけでなく、生きることにおいてもです。情けなく惨めな自分から、目をそらしたくなることは誰にもあります。そういうときは泣いたり、わめいたり…逆に粋がったりすることもあるでしょう。それも時には必要なことだと思います。でも、いつまでもそうしていては何も解決しません。自分の弱さに向き合いながら、自分はどうしたら良いかと懐疑し続けることの中から本当の強さが生まれてくるのではないでしょうか。私は以前からそう考えていました。何も言わず、なすべきことをなす、もちろん辛抱のいることです。しかし、この一年、補習科生たちは、同じ辛さを抱えながら、あせらず、あきらめず、あまえずに、黙ってやり抜こうとするたくさんの仲間の姿をお互いの支えとし、力を与えあいました。そして、しだいに心の壁を低くし壊していったと感じます。彼らはこの一年でまちがいなく精神的に強くなりました。
 努力する人の存在は周囲の仲間に力を与える…彼らはそう教えてくれました。
◆きっと届く!◆
 壁を乗り越えようと努力するエネルギーを、より強くする為にはどうしたらよいでしょうか。精神論は嫌いな方もあると思いますが、やはり、信じることだと私は思います。補習科生には「きっと届く!」という言葉も、繰り返し伝えてきました。「それでも高く高く手を伸ばそう…きっと届く!」と。この「それでも」はそれぞれに解釈してください。国語が苦手でも…目標が高くても…つらく惨めでも…こんな自分でも…などと。高く手を伸ばし何かをつかみ取ろうとすると、まるまっていた背中がすうっと伸び、うつむいていた顔が上がり、自分がつかみたい何かをまっすぐ見つめるでしょう。そういう一つ上へ手を届かせようとする精神力を醸成したいと思いました。ある女の子が決意表明として「きっと届かせる!」と書いくれていたのを見つけたときは、大変嬉しく感じました。担任として投げかけた思いを受け止めてもらえているという喜びは、教師冥利です。
 浪人生に限らず、学校生活を送る中でも、苦しいことやつらいことはあるでしょう。そんなときに「きっと…」と信じて顔を上げる勇気と強さを生徒のみなさんに持って欲しいと思います。うつむいて背中を丸めていては、自分の周りに本当はある人のやさしや人生の楽しさ、自然の美しさにも気がつきません。また、誰かに気持ちを伝えたくてもなかなかうまくいかないとき、そこであきらめたら、もう決して気持ちは届かないでしょう。しかし、「きっと…」と信じていれば、可能性は残されます。勉強だけでなく、部活動などにおいても、「きっと届く!」と信じる力はきっと生活を良い方向へと推進する力になるのではないでしょうか。人生はそんなに甘くない…でも信じる心があればこそ、切り開いて行ける道もあります。補習科生がこの春に咲かせたたくさんの合格桜が、そう語っているように私には思えます。
◆祈り◆
 生徒のみなさんは、それぞれの学年に応じて、来年の目標を持っていることでしょう。新しい年度の始まりに、心機一転、新しい目標を掲げて頑張ろうとすることは、大人になっても大事なことです。一年をよく締めくくって、また新たに4月からしっかり頑張りたいものですね。
 先生方や家族の方は、みなさんのためにさまざまな支援をしてくださるでしょう。学習面のアドバイス、進路に関する相談。毎日お弁当をつくってくださる、制服にアイロンをかけてくださる、授業料を払ってくださる…いちど、特に家族の方から、自分はどれほどの援助をしてもらっているかを考えてみて欲しいと思います。そうすると、当たり前のことが当たり前ではなかったことに気づくはずです。
 私は、補習科生たちと過ごす中で、自分の立場、つまり、教科の指導者、担任、そして人生の先輩として、彼らのために何ができるか、何をなすべきかということを、折に触れて考え続けました。真摯に目標に向かって努力を続ける彼らに、深い敬意を抱きながら、自分にいま何ができるのだろう、何が最善なのだろうといつも考えていました。授業や面接指導において、自分なりに工夫し、実践しました。彼らの熱意を精一杯の力で応援したいと思っていました。
 しかし今振り返ってみると、自分にできたことは、ただ祈ることだけだったのではないかと思います。力がつきますように… 健康で過ごせますように… 目標に届きますように…。
 教師は…いや私は本当に無力でした。最後にできることは、ただ祈ることだった。心の中の挫折感と向き合い、時には不合格のトラウマに苦しみながらも、日夜努力し続けたのは、ひとりひとりの生徒達自身です。
 自分の道を切り開く…力強い言葉ですが、そこにはたくさんの挫折や困難もあります。それでも前進し、目標を手中にしようとするなら、どんなに苦しくてもやはり自分の力で進まなければならない。よき隣人や支援者に恵まれ、後押しされる幸運もあるでしょうが、やはり最後はしっかりと自分の足で立ち上がり、歩いて行くしかないのです。このことも、本当に分かり切ったことのようにも思えますが、補習科生達があらためて私に教えてくれたことでした。
 みなさんも、自分を有形無形に支え包んでくれている大切な人たちの祈りを感じながら、しっかりと自分の力で前進していってください。
◆感謝◆
 苦しいことも悲しいことも、自分を磨く糧である。たとえ苦しい運命に直面しても、その苦しさを自分を磨くためのチャンスと捉えることができたら、そこからまた、新しい何かを学ぶことができ、自分を高めることができる。そのように前向きに人生を捉えて、明るく溌剌と生きたいものです。一年間の補習科生との関わりの中で、あらためてそう思うようになりました。補習科生を担任できた、自分の幸運に心から感謝しています。

 さあ、新しい春が来ます。
 みなさんは、何に向かって手を伸ばしますか?
うつむいている君は、顔を上げて空をみてください。爽やかな春風を感じてください。
 きっと届く…
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