『頭の中は最強の実験室』(榛葉 豊(しんば ゆたか)) 関和久
『数楽しませんか?』(電子書籍版 塩﨑 勝彦) 石井 一郎
本書は元灘中学・高校教諭 塩﨑 勝彦 先生の還暦を記念した本です。内容は,前半は,解答が目に鱗の数学の問題が100問,後半は先生と関わりのある方の先生とのエピソードが載っています。 後半のエピソードは読めば,灘中学・高校で”神”と言われた名物教師の生き様がわかります。電子書籍版の巻頭にある奥様のお言葉通り,先生は,日本数学教育会の山梨大会への途中,長野県塩尻付近を走行中のJR特急「しなの号」の車内で吐血され,救急車で搬送された病院でそのまま亡くなられてしまいました。実は,私は,新大阪からご一緒しており,新大阪からの「のぞみ号」,名古屋からの「しなの号」の車内でも数学の問題を楽しく解かれていたので,容体の急変には驚きを禁じ得ませんでした。約10年間神戸の先生のマンションの一室(ご自宅は,大阪です。いわゆる仕事部屋です。)での勉強会は,今の自分のすべてであると言っても過言ではありません。70歳を超えられても,毎年数多くの大学入試問題を解かれていたパワーには畏怖の念さえ抱かされました。この本で先生の生き様を今後の諸君の人生の参考にしてもらえればと思います。人生いつまでも勉強しなければなりません。
『ガロアの群論 方程式はなぜ解けなかったのか』(中村 亨) 武藤 淳倫
専門書とは言わないまでも,理論や歴史が丁寧に書かれており初学者(理系科目に興味ある者)でも読めるようになっています。御存じのように,2次方程式には「解の公式」なるものが存在します。高等学校では習わないのですが,実は3次,4次の方程式にも解の公式は存在します。しかし,5次以上では解を一律に表現することができないのです。このことを示したのが題名にもある数学者ガロアで,波乱の人生を終えた後に偉大な功績が認められた人物です。今,皆さんが「勉強」に対してイメージしていることは,「答えがあるもの」に対してどうアプローチするかということではないかと思います。しかし,今後皆さんが取り組むことは「答えがまだないもの」に対して,その答えを新たに探究していくことです。この仕事が人間ならではの業ではないかと思っています。ガロアがこの問題に対して思いついた大発見をこの本で感じながら,皆さんが進まれる分野で最先端を切り開いていくことを祈っております。
『セレンディピティー』(R.M.ロバーツ 著 安藤喬志 訳) 高祖 幸夫
ペニシリン,X線,テフロン,ダイナマイトなどの発見や発明に共通しているもの,それはセレンディピティー(偶然に幸運な予想外の発見をする能力)によってもたらされたことである。これらは,私たちの生活を便利に快適に健康的で楽しくしてくれている。本書は重要な発見は,単純な偶然ではなく,創造力と洞察力が大切であることを教えてくれる。先人達の数多くの例から大いに刺激を受けるはずである。
『炭素文明論』(佐藤 健太郎) 高祖 幸夫
炭素は鉛筆や芯や木炭として身近にある。しかし,炭素の素晴らしいところは,炭素同士または他の元素と結びつき,数多くの化合物をつくることである。人類の歴史は多くの炭素化合物に大きく動かされてきた。石油や,新素材,医薬品,火薬などが開発されるたび,人々の意識も経済の流れも大きく変化してきた。本書は今後,いかに炭素を有効活用するか示唆を与えてくれるだろう。
『なぜか惹かれるふしぎな数学(蟹江幸博)』 桒原 英樹
この本は、高校時代に習ったような数学の問題を解くのは苦手だが、実は数学が好きであるというような隠れ数学ファンのために書かれた本です。入門レベルから少し高度なものまで知的好奇心を満たす数学のエピソードが紹介されています。文系・理系に関わらず,非常に読みやすく、面白い内容になっています。多くの人は、高校時代は、センター試験や、大学ごとの個別試験で、よい点を取るためだけに数学を学んできたのではないかと思いますが、本来はそれだけではなく、数学的な発想を楽しむ「数楽」的な要素があると思います。大学では,高校時代より、時間的に余裕があると思いますので,楽しみながら,数学的な発想のよさを感じとれるように,しっかり勉強を続けていって欲しいと思います。また,多くの本に出会い、見識を深めて、それぞれの分野で素晴らしい人になってくださいね。
『読み切り 化学史』(渡辺 啓・竹内 敬人) 関 和久
おすすめの本は「読み切り化学史」です。高校の化学は内容中心で学習してきましたが、歴史的・社会的な背景を知ると自分の知っている技術や知識に深みが出ます。海外の人を含めて多くの人と話をするときに教養として知っておいて欲しい内容です。理系の人にぜひとも読んで欲しい本ですが、文系の人でも楽しく読める本ですので、一度開いてみてください。
『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』(小林 雅一) 藤井 省吾
AI技術の最先端であるディープラーニングの本格的な研究者は2014年の時点で世界で約50人ほどだそうです。また次世代ロボットの開発ではグーグル,大学ではMIT,カーネギーメロン,スタンフォードがリードしているそうです。残念ながら日本勢はこの分野で厳しい状況に立たされていることも書かれています。世界を大きく変えるAI革命について詳細にかつわかりやすく書かれています。この本で刺激を受けた皆さんのなかから世界的なAI研究者が出てくれることを期待しています。
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