『相談課便り』第21号

教育相談課について

教育相談課では、何よりもまず、「安心して相談できる場」の提供を最も重要なこととして考えています。深刻な相談だけでなく、学校生活や家庭生活の中で感じられるほんの些細な気がかりであっても、どうぞお気軽にご相談ください。面接相談と電話相談の両方を行っています。生徒からの相談ばかりでなく、保護者の皆様からのご相談にも対応させていただきます。本年度のスタッフは、各学年3名ずつの計9名です。(裏面のスタッフ紹介をご覧ください。)相談活動を次のような方針で行っています。

(1)相談に来た人が自分の力で一歩を踏み出すお手伝いをします。
無理に話をさせられたり、解決方法を強要されることはありません。あくまでも相談に来た人が主人公です。

(2)秘密は厳重に守られます。
相談をする過程で知り得た個人に関わる情報や、相談の内容は、相談に来た人の了解なしに第三者に(例えば、担任の先生・顧問の先生などでも)話すことはありません。ただし、命にかかわるような場合や犯罪に巻き込まれる可能性の予測されるような場合には例外もあります。しかし、このような場合もできるだけ本人の了解を取ることを基本としています。

(3)気持ちを大切に、共に考える姿勢を大切にします。
相談室では、魔法のような解決策が用意できるわけではありません。不登校の人が相談に来た翌日からすぐに登校できるような方法を提供できるとは限らないのです。だったら、相談しても仕方がないでしょうか?…いいえ。相談室では、相談に来た人の気持ちを大切にしながら、これからどうすればよいかを共に考えることはできると思っています。今の在り方をまずは受け入れることから始めて、本人の意志を尊重しながら、共に考える姿勢で取り組んでいます。

(4)予防的・開発的教育相談も提供します。
教育相談として一般的に考えられている、悩み相談やカウンセリングなどは、問題解決的教育相談です。相談室では、こういった取り組みのほかに、リラクセーションや自己理解、コミュニケーションスキルなど、予防的・開発的教育相談も紹介しています。これらは、よりよく生きていくための指針になったり、問題が発生するのを未然に防ぐことに役立ったりするものです。夏に行う、ピア・サポート集中ワークショップでも、これに関連した多くの役立つトレーニングを用意する予定です。集中ワークショップは、8月3日(火)・4日(水)の予定です。詳細が決まり次第、別途お知らせします。

生徒のセクシャルハラスメント等の相談

生徒の皆さんが、セクシャルハラスメント等のことで相談したい時には、次のスタッフが対応させていただきます。小さなことでも、遠慮せず、我慢せず相談してください。

大西由美(国語科・教育相談課長)
西原智子(保健体育科・保健主事)
高祖幸男(理科・教育相談係)

松本雅子(養護教諭・教育相談係)

学校医による心の健康相談

本校では、校医の精神科医師・中野善行先生による「こころの健康相談」を年間5回計画し、各回ごとにご案内を差し上げています。専門のお立場からの支援をいただき、毎回好評をいただいています。

第1回目は終わりましたが、このあと、7月・9月・11月・2月に実施する予定です。教育相談課(大西由美・松本雅子)または担任までお申し込みください。

TEL 086-272-1271(岡山朝日高等学校)

スクール・カウンセラーによる相談

年間12回、スクール・カウンセラーの森口章先生においでいただきます。森口先生は、高校教師をご退職後、「沢田の杖塾」を主宰されるなど、顕著な活動を続けておられるすばらしい先生です。本校では、生徒や保護者の相談に応じていただいたり、研修会なども行って頂き、お力添えいただく予定です。今後の来校予定日は以下の通りです。

※スクール・カウンセラー来校予定日※
6月16日(水)・7月1日(木)・8月24日(火)
10月6日(水)・10月28日(木)・11月11日(木)・12月3日(金)
1月13日(木)・2月15日(火)・3月3日(木)・3月17日(木)
*8月と11月は講演会のため相談は取れませんが、緊急の場合は教育相談課までお知らせください。

☆その他の取り組み☆
教育相談課では、LHRの「人間関係作り」において、学年団からの要請に応えて、「協 力して課題を解決する」グループ・ワーク・トレーニングや自己理解の機会なども提供しています。去る 5月27日の2年生のLHRでは、「自分を知り・他者を知る」ことで人権を尊重する意識を育てることを目標とした「気になる自画像」のワークを実施し、好評でした。また、近年注目されてきた特別支援の観点にもたって、スクール・ カウンセラーの先生、校医の先生、相談課のスタッフおよび生徒課の先生方とチームを作って生徒を支援する活動も行っています。事例の内容によっては、特別支援学校とも連携して効果的な 支援ができるようにしたいと考えています。

「紡ぐ」

大西由美

繭から、文字通り「糸口」を見つけて繊維を引き出し、よりをかけて糸を紡ぐ…。一端が引き出されると、糸は次から次へとおもしろいように続いて出てきます。団子状の繭から手品のように…。数年来、教育相談に携わってきて、この「紡ぐ」ということが、自分のしている仕事と実によく似ていると思うようになりました。しかしながら、「糸口」を見つけるまでの時間は、繭のように簡単にはいかないのですが…。

悩みや不安を抱えた生徒が、相談室を訪れるとき、彼らの多くが、今の苦しみからすぐにでも救ってほしいという差し迫った思いを持っています。だから、彼らは口をそろえて「先生、どうしたらいいですか、教えてください。」とよく問いかけてきます。でも、私から、「こうしたらいいよ。」と具体的なアドバイスを返すことはほとんどありません。私は彼らに「あなたはどうしたらいいと思う?どうなったらいいと思う?」と問い返すことにしています。「どうしたらって急に言われても…えぇっと…?」とか「○○のようにしたいと思うけどできないから苦しいんです。」とか、「△△さんとこんな風につきあえたらいいと思うんだけど…」などと、反応は様々です。「それがわかれば悩んだりしませんよ!!」と言い返されたこともありました。しかし、一人一人リアクションは違っても、彼らは、こちらの問いかけをきっかけにして「助けてほしい・誰かにどうにかしてほしい」ではなくて、「自分は何を望んでいるか、どう事態を好転させたいのか」について、自分の力で考え始めます。もちろん、すぐにそのようにはなれない生徒もいますが、相談を繰り返す中で次第に自分自身の中にある「糸口」をそれぞれのやり方で探し始めます。

「糸口」に気づくには、自分の現状を客観的に見て、それを一旦受け入れることが必要です。「いじめられている自分」「学校に行きたくない自分」「成績が悪い自分」など、受け入れがたい現実が、悩みを抱えた生徒にある場合には、この現状を受け入れる(ありのままの自分を引き受ける)ことが困難なこともよくあります。何度も相談しても、結局はいつも誰かや何かのせいにして「でも…」「だって…」を繰り返してしまい、「糸口」が見つからない(見つけようとしない)ままになってしまうこともないわけではありません。そんな場合も、我々相談を受ける側は、彼らに寄り添いつつ辛抱強く待ちながら、相談を続けて行きます。

相談という活動は、途方もなく絡み合った繭玉から、小さな小さな「糸口」が見つかるまで、じっくりゆったり腰を据えて対峙し続けることのように思えます。決していらいらして投げ出したりすることなく、繭玉が「糸口」を教えてくれる(生徒が自分を受け入れ、「解決の糸」を自分の力で紡ごうとする)まで、気長にじっくりつきあうことだと思えるのです。そのやりとりの中で、はっきりした「糸口」でなくても、生徒が発する言葉の端々から、言葉にでき切れていない悩みの有り様を読み取ったり、彼らが本当は気づいているのに言葉に出せないでいる何かを感じ取ったりすることが、相談を受ける我々の力量にゆだねられる部分だと私は考えています。相談を受ける我々が、彼らに寄り添いながら、こんがらがった繭玉の糸を一緒にどれだけほぐしていけるか…、そこに我々の活動の意義があるように思うのです。

つまり、我々相談スタッフに求められているのは、生徒との言葉のやりとりを通じて、彼らの相談に来るまでの感情の動きや葛藤の内容を一つのストーリーに整理して理解していく(その手助けをする)力である、悩みや苦しみの裏にある見えない何かをできるだけ具体的なわかりやすい言葉にしながら、ひとつの物語に「紡ぐ」力であると思うのです。

解決の糸口を見つけていく…。何時間も、何日も、ひょっとしたら何年もかかるかもしれません。結局何もできなかった、と無力感に苛まれることがないともいえません。しかしながら、悩みや不安に寄り添い、じっくり気長につきあい、物語を「紡ぐ」人間がいてこそ、見つかる糸口もあるでしょう。その意味で、本当に地道に、誠実に、これからも相談活動を続けていきたいと私は考えています。