『相談課便り』第29号
『相談課便り』第29号
★一学期も半ばを過ぎ、一年生は制服姿も板に付くころ、生徒の皆さんの生活リズムも確立してきていることと思います。中間考査を終えて、緊張が緩み、疲れが出やすい時期でもあります。本年度最初の「相談課便り」をお届けします。どうぞお読みください。
「教育相談課について」
教育相談課では「安心して相談できる場」の提供を最も重要なこととして考えています。深刻な相談だけでなく,ささいな気がかりであっても,どうぞお気軽にご相談ください。面接相談と,電話相談の両方を行っています。また,生徒からの相談だけでなく,保護者の皆さんや教職員からのご相談にも対応させていただきます。スタッフは10人で,次のような方針で相談活動を行っています。
①相談に来た人を主人公とします
②秘密は厳重に守られます
③気持ちを大切に,共に考える姿勢で対応します
④予防的・開発的教育相談も提供します
⑤特別支援の観点からも細やかに対応します
「学校医によるこころの健康相談」
本校では精神科校医の中野善行先生による「こころの健康相談」を計画し,各回ごとに文書でご案内を差し上げています。専門のお立場からのアドバイスやご支援をいただくことができます。本年度の第1回目は終わりました(5月31日)が,このあと7月・9月・11月・2月に実施する予定です。
「スクール・カウンセラーによる相談」
昨年度に引き続き,スクールカウンセラーとして森口章先生に来ていただいています。先生は高校の教師をご退職後,現在は「沢田の杖塾」を主宰され,山陽新聞の相談欄を担当されたり,講演会に回られたり,多方面で活躍されています。本校では、年間12回にわたって生徒や保護者の相談に応じていただいたり,研修会や事例検討会などにもお力添えをいただく予定です。今後の来校予定は以下の通りです。
6/13(水),7/18(水),8/22(水),9/28(金),10/10(水),11/20(火),12/20(木),1/16(水),2/1(金),3/12(火)
「こころの健康相談」「スクールカウンセラーによる相談」は予約が必要です。
教育相談課(大西由美・神田美紀)または担任までお申し込みください。
TEL 272-1271(岡山朝日高校)
「生徒のセクシャルハラスメント等の相談」
生徒のみなさんがセクシャルハラスメント等のことで相談したいときには,次のスタッフが対応させていただきます。担任も相談に乗ります。
大西由美(国語科・教育相談課長)
大口正行(保健体育科・保健主事)
時岡英雄 (保健体育科・教育相談係)
神田美紀 (養護教諭・教育相談係)
「ピア・サポート活動」★支え合う心を育て、あたたかな学校風土作りを目指します★
生徒の間に相互支援の力を育てるピア(仲間)サポート(支援)活動を、本年度も実施します。
この活動を通じて、生徒が自己肯定感を増し他者を尊重し(自重互敬)、いじめや不登校の起こりにくいあたたかい風土が築かれることを目指しています。希望者を募り(6月)トレーニングを行い(8月)夏休み後半から実際の活動に入ります。活動を報告したり新たな取り組みを考えるフォローアップセッションを実施します。トレーニングでは、「話の上手な聴き方」「自己理解」「リラクセーション」「対立の解消」などについて学びます。将来、教師や医師・看護師・保育士などの仕事に就きたいと考えている人には、ぜひとも学んでほしい内容ばかりです。本年度もたくさんの生徒の参加を待っています。
★過去の活動の様子を岡山朝日高校のホームページで見ることができます。
◆◇◆ピア・サポーターの言葉紹介◆◇◆
23年度に実際に行ったサポート活動についてのコメントを紹介します。
●意識的な声かけ活動
「クラスの団結力を強めるために、朝、学校に来たときにみんなにあいさつをする。」「友達が困っていそうだったら自分から声をかけて相談に乗れるようにする。」というふたつの点を意識して生活した。結果として友人のちょっとした変化に気づき、よい声かけができたときもあったが、クラス全員に声を掛けることはできなかった。今後も学校全体のためにピア・サポーターとして「声かけ・あいさつ」の活動を頑張っていきたい。(1年男子)
●相談活動
悩みがあって「苦しい」と感じている人の話を聴いて相談に乗った。トレーニングで学んだ「話の上手な聴き方」を心がけてじっくり聴くことができた。相手がどんな言葉を期待しているのかがわからなくて、不安もあったが、「話を聴いてもらえてすこし楽になった」と言ってもらえてよかった。相談が自分のストレスにならないように、困ったときは相談室の先生に自分が相談しにいった。これからも、小さな事(あいさつなど)にコツコツと取りくんでいきながら、自分の語彙を増やして、よりよい相談活動ができるようになりたい。(1年女子)
●奉仕的活動
教室の黒板消しや、掃除、配布物の配布など、係でなくても気づいたときにはするように心がけた。活動することで自分の気持ちがすっきりした。またクラスがスムーズに動くようになった。時には手伝ってくれる人ができたりして、クラスの人と話しやすくなった。サポート活動が日常的なものになっていくことはいいことだと思う。自分から動くことで友達の輪も広がった気がする。これから受験生になったらストレスがたまると思うので、リラクセーションをたまにやってみたい。人の話はいつも上手な聴き方で聴くようにしたい。(2年女子)
●◎まとめの感想◎●
二年間のピア・サポートの活動に一段落がつきましたが、意外と短かった気がします。去年の今頃のことを思うと、進路やクラスのことでとても心がもやもやになっていて、フォローアップセッションに来て、やっと心が落ち着きました。今でも進路や友達関係のことで悩んでいますが、状況は違うと思います。自分を落ち着ける方法を知っていて、悩みを話せる友達・先生がいて、そして、よりプラス思考である自分がいます。ピア・サポート活動に参加して、一番良かったと思うことは、基本的なことである「人の話の聞き方」や「相手の本当の気持ちのくみ取り方」などを学べたことです。「ピア・サポート活動ではこういうことを習う」と他の人に伝えたら、「なんだ、そんなの常識じゃん」と言うかもしれません。でも実際、今の社会では忘れられていることだと思います。とても早いペースで日常が進み、効率や利益が優先される社会では、相手の話をゆっくり丁寧に聞くのは難しいことです。だからこそ、ピア・サポート活動をやるべきだと思います。この活動が中学校や大学、社会に広がれば、日本はよりよい国になると思います。本当に二年間頑張って良かったです。この機会を与えてくれた保健委員会や朝日の先生方に感謝します。高三でも何かこういう集まりがあったらいいなと思います。社会に出てからも学んだことを生かしたいです。(2年女子)
「相談課のスタッフ紹介」
24年度・相談課の先生方の自己紹介です。よろしくお願いいたします。
時岡英雄 Hideo Tokioka(3年H組甲担任・保健体育科)
3年H組甲担任、保健体育教員、サッカー部顧問の時岡英雄、47歳です。朝日高校OBで今年が高校3年生から30周年の記念の年です。●1972年に出版された名著「インナーゲーム(著者W.T.ガルウェイ)」によれば、自分の心(自我)をセルフ1、自分自身の本能部分をセルフ2とに分けて人間の活動を見ていくと、負けることや失敗への恐れ、自分自身の能力への疑問、見栄・体裁といったセルフ1(自我)の活動が、セルフ2(本来の自分)の能力発揮をしばしば妨げている、たとえば「プレッシャーに負ける」といった現象も、その象徴で、自分自身を窮屈な鋳型に押し込み、その自由を奪っているのは、実は自分の心(セルフ1)であると述べられています。●この本を読んで思ったことは、本来の自分自身の能力(成長をしていく可能性)を信じることがどれほど大切かということ。そして、自分を見くびらない、また簡単に物事をあきらめないなど、その力を十分に発揮できるように、出来るだけ柔らかい思考や発想で現実に対処していくことの必要性です。●朝日高校の学校生活は、山あり谷ありです。当たり前です。しかし、その経験こそが、自分自身を成長させていくのです。さあ、大事なのは、自分を信じること。信じて、信じて、信じ抜こう。あなたには、あなたにしかない素晴らしい力があるのですから。
小野公生 Takao Ono(3年I組甲担任・理科)
教育相談課のメンバーとなって2年が経ちました。何かあったときにはいつでもどうぞ。
福田遥 Haruka Fukuda(3年A組甲担任・英語科)
3年の英語科福田遥です。私が高校3年生の時のスケジュール帳を開くと、土日もびっしりうまった部活動の予定の中に、『4月11日(日)―とにかくやらねばならないのだから、どうか笑顔でできますように』とあります。どこかの映画監督の言葉ですが、部活動と勉強とのあいだでもがいていたその時の苦しい気持ちに、ぴったり合ったのだと思います。今でも変わらず、さまざまなことにもがいている日々ですが、格闘し続けるみなさんと過ごす一日一日を、笑顔で過ごしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
永田宏子 Hiroko Nagata(2年G組乙担任・地歴公民科)
北棟東階段を上がると,操山の新緑が眩しく目に映ります。新しいクラス,新しい仲間との出会いに心浮き立つ春ですね。はりきって毎日を過ごしていると思いますが,中には進路や勉強のこと,家族・友達との関係などで少し悩んでいる人もいるかもしれません。そんな時は遠慮なく声をかけてください。あなたの心がちょっと軽くなるお手伝いをしたいと思っています。
白神充教 Mitunori Shiraga(2年F組甲担任・数学科)
高校時代は,本当にごく普通の生徒?で,教師とは必要最低限のことしか話をした記憶がありません。そんな自分であったので,教師は向いていないと思った時期もありましたが,最近は集団の中にはそんな人間も必要なはずだと前向きにがんばっています。こんな私ですが,相談したいことがあれば,遠慮なく声をかけてください。
神田美紀 Miki Kanda(養護教諭・2年団所属)
朝日高校2年目になりました養護教諭の神田美紀です。
毎日こころや身体の不調を訴えてくる朝日校生のみなさんの話をよく聴いてみると、勉強・友人関係・部活動・恋愛・進路・これからの生き方等、様々な悩みが中心にあることが多いです。そして、みなさんは自分なりの答えを出そうと、それらの事柄に対してきちんと向き合おうとする姿を見せてくれます。その姿に敬意を払いながら、傍らでを聴いていると、自分の心や相手の心に『向き合う』ことは辛くしんどいことだけど、必ず人を成長させてくれるものだ感じさせてくれます。私は、みなさんと『向き合う』ことを楽しみにしています。保健室にいますから、声を掛けてください。
石原明子 Akiko ishihara(1年F組甲担任・国語科)
悩みとは無縁のように見える(かもしれない)私ですが、実はその時々に、小さい大きい、いろんな悩みを抱えています。時には自分一人でウンウン悩んで向き合わねばならないものもありますが、多くは周囲の存在…それは家族であり、同僚であり、本であり、自然であり、時にはスィーツ…によって和らげらていることにふと気づきます。悩むことも悪くありません。いろんな発見がありますよ。
大西秀規 Hideki Oonishi(1年H組甲担任・数学科)
朝日高校1年目の大西です。歴史がある正門と近くの大きな木に最初びっくりし、比較的新しい校舎と伝統的な制服にも新鮮な気持ちを持ちました。朝日高校のことも皆さんのこともまだ分からないことばかりですが、よろしくお願いします。最近の趣味は、卓球とバスケットの観戦と囲碁です。ほかは特に何もありませんが、数学の相談も受け付けますので気軽に声をかけてください。
大世戸麻衣 Mai Ooseto(養護教諭・1年団所属)
朝日高校一年目の大世戸麻衣です。新学期が始まり月日があっという間に過ぎていきますね。皆さんの頑張りに感心させられる毎日ですが、スタートダッシュで息切れしそうな人はいませんか?たまにはホッと一休みし、心の元気を取り戻して自分自身を労わってあげてください。それがまた次へつながるエネルギーになります。普段は保健室にいます。困ったこと、相談したいことなどがあれば、どんなことでも気軽に声をかけてくださいね。
「待つ」ということ
大西由美
マウスをクリックすれば一瞬で世界とつながり、地球の裏側の出来事がまるで目の前にあるようにも感じられる今日、「待つ」という一見シンプルなあり方が、実は最も難しく大切なことなのではないかと思うようになりました。
「待つ」。物事の進展や成長、成果の実現等を予期して、「待つ」。いま、3年生を担任し、来春に向けての彼らの成長を見守る自分は、まさに彼らの将来に「期待」=「予期して待つこと」をしているわけで、そこには「努力して成績を伸ばし、きっと志望校に進学してくれるだろう」という肯定的な思いがあります。もちろん、国語教師として、担任として、自分の経験や知識を活かし、最大限の支援をすることは言うまでもありません。しかし、一方では、彼らが自分の力で教え伝えられたものを血肉として成長し、相応の成果を上げていくことを「待つ」姿勢を取りたいと思っています。
岡山朝日高校の先生方は、この「待つ」を実践できる先生方だと私は思っています。生徒の資質をしっかりと見抜き、適切なアドバイスをする。優れた教科指導・進路指導を行って、進路実現に向けて最大限のサポートをする。また様々な行事や部活動を通じて豊かな経験ができるように組織作りをし、まさに「文武両道」で生徒の成長を支援しています。しかし、何もかもお膳立てして、手取り足取り導くのではなく、生徒が壁にぶつかり、考え、自分を見つめ、解決の糸口をつかみ、自分の力で成長して行く姿を、すぐそばに寄り添いながらもすこし離れたところからじっと見守り「待つ」のです。
私が携わっている教育相談も、この「待つ」ことが大切な活動であると考えています。悩みを抱えた生徒が、アドバイスを求めてやってきます。じっくり話を聴き、気持ちにより添い、受けとめます。しかし、「こうしなさい」「ああしなさい」とは言わない。あくまでも、生徒自身が、自分の今をじっくり見つめ、何が苦しいのか、今後どうなりたいのかを自分なりに言語化して、問題と向き合うことができるまで、何度でも話を聴き、自分の力で立ち上がろうとするのを「待つ」のです。悩みを抱えた生徒の多くは、今ある自分を受け入れられず、自己肯定感が低くなったり、あるいは、周囲の環境の変化にとまどい、孤独感・孤立感を募らせている場合もあります。そして、辛い・悲しい・寂しい・苦しいといった思いが湧いてくるのですが、その原因が自分でよく掴めていないときには、一層混乱したり悩みが深くなったりするようです。そういったことをわかった上で、じっくり話を聴き、寄り添い、「待つ」姿勢をとり続けて関わることは、場合によっては長い時間を要し、相談を受ける側も相当疲れます。そんなときには、ついついアドバイスをしてしまいたくなるのですが、「○○してはどうですか」という言葉が救いになることはほとんど無いことも経験上知っているので、「○○なんですね・・・」と感情に寄り添い辛抱強く関わり続けています。
「待つ」ことがなかなかできないでついつい「○○しなさい」と言ってしまうことは、どこの親御さんにもあることではないかな、と思います。私自身、子どもには「はやく起きなさい」とか「まじめにやりなさい」とかいろいろと注文をつけるうるさい母親でもあります。もちろん、人生の先輩・良きアドバイザーであることは、親としての役目のひとつであり、時宜にかなった助言は大いに子どもの支えとなるものです。しかし、それが度を超すと、かえって子どもを苦しめ追い込み、伸びる可能性を阻害してしまう危険性があることも忘れてはならないことなのです。常にこのことを頭において、自戒するようにしています。
高校生は、大人でも子どもでもない中途半端な不安定な時期です。わずか15年ほどの人生経験の上に立って、自分の将来像を思い描き、進むべき道を見つけることを要求するのは、実際のところ酷なことかも知れません。しかし、多くの先輩がそうであったように、今の生徒たちも、試行錯誤しながら自分の力で考え、目標を定め、努力して、成長してゆくはずです。その時を信じて「待つ」ことが、われわれ教師と親御さんにとって大事なことではないかと思います。知らんふりではない、突き放しでもない、べたべたもしない。しっかりと話を聴き、子どもの気持ちにより添う、しかし余計なお膳立てや口出しはせず、自分の力で進むまでそっと見守る…この「待つ」という言葉の奥深い意味を、もういちどいま、かみしめる必要があると私には思えてなりません。
岡山朝日高校の校訓「自主自律」は「のびのびときまりよく」という実に矛盾に満ちた逆説表現に言い換えられています。「自主」や「自由」が保障される背景には「義務」や「責任」が伴っているということが、優しい言葉で見事に言い表されています。同じように見事には説けませんが、「待つ」ということは「心はすぐそばに寄り添いながらも離れたところからじっと見守る」、つまり「離れて寄り添う」ことではないかと思います。
24年度もまた、「待つ」姿勢を大切に日々の教科指導・生徒指導そして相談活動を続けていこうと思います。
(教育相談課長・3年C組乙担任・国語科)