『相談課便り』第35号

「ルーティン・・・」

時岡英雄 Hideo Tokioka

今年の8月に大リーグのイチローが日米通算4000本安打を達成しました。日本でプレーした後、大リーグという舞台での大記録、日本の現役選手で最も多いのは2147本というのですからその凄さは際立っています。今年40歳になる現役イチロー。今後どう進化していくのか楽しみです。

その記録達成時のイチローのコメント。
「4000安打を打つには8000回以上の悔しい思いをしてきた。それと常に向かい合ってきた。」
「失敗を重ねていって、たまにうまくいってということの繰り返しだと思う。それを続けていく。」
プロとしての思考法・心構えにも敬服するところがあります。

イチローといえばルーティン。打席に入った時のあのポーズ。毎日の生活でも朝食はカレー、グランドに入る足を決めている、練習メニューなど同じ事のことの繰り返し(ルーティン)を大事にしています。

プロ(本物)は、日々同じことを繰り返していくことの重要性を理解しているのでしょう。変わらず繰り返すから、変わったこと(変化)がわかります。繰り返しは高い感度(感受性)のための軸となります。繰り返しの中で、まれに訪れる発見や驚き、感動を経験し、さらに高いモチベーションを維持することが出来るのです。進歩するためには(学んで力をつけていくために)、同じことを続けていける力と、同じようにみえる繰り返しの中に変化を見抜く力が大切です。目標・目的は持つものの、所期の目的と違うところに抜け出て、バージョンアップするのが「学び」であり、それは事後的にしかわかりません。やったものがやった後に実感・体感するものなのです。

頭だけ(考えるだけ)ではだめ。実際に具体的に行動をし身体全体で感じる。身体が感じることをもっともっと大切にする必要があります。平凡と思えることにこそ、大きな飛躍の種があると思います。

●○保健室の窓から○●「つながりすぎ社会」

先日、朝日新聞の天声人語を読んでいると、なるほどと思う文章に出会った。
『若者ばかりではないけれど画面を見つめっぱなしの人が街にあふれる。ソーシャルネットワーク(SNS)でどこかにつながっている人々である。いまや日本は「つながりすぎ社会」だという議論を本紙(朝日新聞)文化面とデジタル版で読んだ。哲学者の千葉雅弥さんと浅田彰さんの対談だ。新進気鋭の千葉さんは、最近はやりのLINEなどを通じた過剰な「接続」が、むしろコミュニケーションを空疎にし、形骸化させていると指摘する。どこかで断ち切ることが必要ではないか、と。社会の中で孤立する人が増える一方で、つながりすぎが心配される。矛盾した現象では多分ないのだろう。「個」であることと、人の輪をつくること。二つのことを各人の中で調和させる。それが大切であり、かつ難しいのだろう。』

保健室でよく耳にする会話 「LINEは既読マークがつく。読んだのが相手に解るから返信するだけ。本当は読んで終わりたいけど…それが出来なくてついつい…」「ガラケイからスマホに変えたら便利で手放せない。でも私の時間を奪われる気がする」を思い出した。手っ取り早いつながりだけを求めるのであれば、SNSは格好の居場所になるのであろう。ただ自分の気持ちや感情は、メールや言葉そのものだけでは、相手に7%程度しか伝わらないと言われている。「自分」と「他者」が共に時間を共有し、お互いの表情や声のトーン等で感じ合い伝え合うことが、本来人間が求めているコミュニケーションだろう。ただ今は手のひらの中だけでツナガルことができる時代。

『手のひらばかり見つめず、自分の目の前にいる「他者」の表情を見てご覧。あなたの求めているつながりはそこにあるんじゃないの…』と「つながりすぎ社会」の生徒に声を掛ける日々である。

Miki

「輪」

小野 公生 Takao Ono

12月12日に、今年の漢字が「輪」に決定した。2020年に東京オリンピックが開催されることが大きく影響したのであろう。これから日本中で五輪の輪が掲げられていくのだから、大変おめでたい話である。

一方で、輪には単なる円形の形だけでなく、人とのつながりという意味が含まれている。東日本大震災の東北復興における地域を越えたつながり、台風30号で被害を受けたフィリピンに対する国を越えた支援のつながりなど、社会奉仕貢献の意識が高い皆さんにとっては感銘を受けることが多かった一年だったのではないだろうか。

しかし、遠くのことばかりでなく、自分の周りを振り返ってもらいたい。授業時間も放課後も部活動時も、構成する者はその都度異なるものの、多種多様な輪が作られているはずである。今の自分はどのような人間関係を築いているのかを時間のあるときに振り返ってみてはどうだろうか。

ちなみに私についていざ振り返ってみると、私の専攻は物理であるが、教員免許は理科であるので、実は化学・生物もできなければいけない。しかし、実情は高校の専門分野を全てカバーするのは非常に難しい。だから他の科目とのつながりが必須である。化学と言えば、私の知り合いにアロマテラピーが好きな(男の)教員がいる。化学薬品は臭いが刺激的なものが多いので、例え教科書に載っていなくともリラックスのために生徒にアロマ教育をしたいとよく言っている。物理学とアロマテラピーは一見結びつかないが、医療分野、例えば理学療法では物理的刺激も化学的刺激も必要であるため、関連性が大いにある。理科という大きなくくりの中ではどちらも重要なのである。おそらく物理だけの世界で過ごしていたら巡り会うことのできない分野であろう。

皆さんは卒業まで多くの学問を学び、多くの人間に出会い、様々な刺激を受けて過ごしていくだろう。新しい出会いの場では、輪を広げることができるだろうか。初めは自分にとって必要と感じなかったり、苦手だから避けたりしてしまうこともあるかもしれないが、その出会いに利益があるかどうかは短い時間では決まらないであろう。思い切ってリングの留め金を外して、輪を広げていってもらいたい。たとえ小さな輪であってもつながっていれば、新しい未来が開けることもある。

まだまだ広く未来を切り開くことのできる皆さんにエールを送りたい。

 「自分の輪を広げて、新しい自分を切り開こう!」

★☆★平成25年度ピア・サポート活動に参加して★☆★

入学した当初は、ピア・サポート活動がどんなことをするものなのかすら知りませんでした。そんな私がピア・サポート同好会に興味を持ったきっかけは四月の部活動紹介でした。その時の、「ピア・サポート活動は仲間同士で助け合うことだ」というフレーズに惹かれてガイダンスに参加し、八月の集中トレーニングを受け、ピア・サポーターとして活動するようになりました。ピア・サポーターとして活動、と言っても、私が二年間続けたことは休み時間に黒板を消すといった些細なことではあるのですが。ピア・サポート活動とは友達の悩み相談を受けるといった大きなものから、クラスメイトに毎日笑顔で挨拶をする、などの小さなものまで様々です。各自がよりよい学校生活のために、「自分のできる範囲で」行動することが重要なのだと思います。私は二年間のピア・サポート活動を通して、その「自分にできる範囲」を広げる手伝いをしてくれるのがピア・サポート同好会なんだと感じました。例えば、八月の集中トレーニングでは話の上手な聞き方や、リラクゼーションなどを学ぶことができます。これを知っているだけでも、学校生活は格段に過ごしやすくなると思います。また、ピア・サポート活動を通して、共にピア・サポーターとして頑張る仲間を得ることができます。先生方やピア・サポートの仲間にもらったアドバイスは、今でも私の学校生活における大きな指標となっています。

私は、ピア・サポート活動を二年間続けたことによって自分の可能性を少しでも広げられたと思っています。他人を支える力、困っている人を助ける力、そして自分を律する力を手に入れられたことは、これからの人生においても大きな意味を持つことでしょう。

ピア・サポート活動で学んだことを忘れずに行動していきたいです。

Haruka

「「いじめ問題・悩みに関する調査」結果の概要」

神田 美紀

毎年この冬の号では、「いじめ問題・悩みに関する調査」の結果を報告しています。この調査は,教育相談課として長年継続的に実施しているものです。生徒の皆さんが「いじめ問題」についてどのように思っているか、日々どのような思いで学校生活を送っているかを調査し、その結果を共に考えることで、気づきや行動変容に結びつくことを期待しています。また、学校でも結果を共有し様々な問題に迅速に対応できるよう協議しています。

問A 【いじめ・悩みについての質問】の結果(抜粋)

☆全体的な傾向
「体調をよく崩す」「勉強の仕方」「将来の見通し」「他人からの評価」の項目は、例年と同じくややポイントが高くなっています。「体調をよく崩す」「勉強の仕方」「将来の見通し」のいずれの項目も、やや2年生がポイントが高くなっていますが、各学年も生徒の多くが勉強面や将来についての悩みを抱えており、一番の関心事であるだけに不安や焦りなどの気持ちも大きいようです。3年生は「勉強の仕方」「将来の見通し」の数値が、1、2年時と比べ大幅に減っており、具体的な目標を持って前向きに生活できるようになってきていると考えられます。「他人からの評価」の項目については、毎年どの学年でもポイントが高く、他人との関係の中で自意識が高まるのもこの年代では当然のことと言えます。また「友人関係」や「学校生活」で悩んでいる1年生の割合が、他学年や例年と比較するとやや少ない傾向にあります。

「問A」質問事項3年2年1年
a  生活のリズムが整わず,体調をよく崩す。2.02.11.9
b  友人関係で悩むことがよくある。1.81.71.7
c  学校内に信頼して相談できる人がいない。1.71.61.6
d  勉強の仕方がわからず,集中できない。2.22.32.2
e  将来への見通しが立たず,気力が湧かない。2.02.32.0
f  学校に行きたくないとよく思う。1.91.91.7
g  私には友人がいない。付き合いがうまくいかない。1.41.31.3
h  私はいじめられている。1.11.11.1
i  からかわれたり,手を出されることがあり,いやだ。1.31.31.2
j  言葉や態度で傷つけられることがある。1.41.31.3
k  クラスの中に改めるべき問題がある。1.51.51.6
l  いじめたりいじめられたりしている人がいる。1.41.21.2
m  人が私をどう思っているのかとても気になる。2.32.32.1
n 私のことをわかってくれる人は一人もいない。1.51.51.3
o 家族は私に過剰に期待をかける。1.81.81.7
p 家族には,悩みがあっても相談できない。1.71.81.6
 q 私の落ち着ける場所はない。1.51.41.3

1=あてはまらない 2=あまりあてはまらない 3=ややあてはまる 4=あてはまる
の4件法で回答し,平均値を表す。

☆友人関係の悩みについて
思春期~青年期を迎え、心と身体の変化に自分自身とまどいながら、その不安定さの中で人間関係、勉強のことなど、悩みは増える一方です。特に人間関係が広がる高校時代には仲間から嫌われていないか、友人といかに上手につきあうか、ということで不安に思っている実態がこの調査からも見えてきます。
悩み苦しむことは、決してマイナスではなく精神的な成長の上では大切な過程です。自分で解決法を見いだしたり、自分の中で折り合いをつけたりしながら大人へと成長していくものです。他人との関係において自分をみつめ、自我の確立をしていくのが、この年代の特徴ともいえます。

☆いじめの実態について
質問h~lまでがいじめに関連した項目であり、その数値は高くはないものの毎年皆無ではなく、いじめにつながるような「からかい」や「言葉の暴力」を含めると、本校にもいじめ問題は存在するということです。こういった行為は、軽い気持ちから何気なく行われているかもしれませんが、された方は想像以上に辛い気持ちになり傷ついているのだということがわかります。周囲の人もそのような場面を見たり聞いたりして不愉快な気持ちになり、クラスに改善すべき点があると答えていると思われます。

問B 【朝日高校に「いじめ」はありますか。あるとすればどのようなことですか】 について(自由記述)

「知っている限りではない」「あまりない」「目撃したことはない」「知らない」が多数の意見でしたが、「軽いからかい」「陰口」「悪ふざけ」「冷笑」「特定の人を避ける」「成績で人を差別」「LINEなどでグループを作って陰で人の悪口、根も葉もないうわさをたて、集団で個人に対して陰で誹謗中傷している」などいじめとも思える事ならたくさんあるという意見も少数ありました。

 問C  【もしもいじめにあったり、悩んでいる友人がいたら,あなたはどうしますか】について(自由記述)

「相談にのる」「一緒に改善策を考える」「積極的に話しかける」「両方の話を聞き仲裁をする」「先生や親に相談する」「孤立させない」「陰ながら手助けする」「ピアサポーターとして助ける」「いじめを許さない雰囲気を作る」など、解決について積極的な記述が例年以上に多くみられました。また「助けを求められたときのみ助ける」「自分がそれに巻き込まれないように気を付ける」「特に何もしない」「放置する」「自分で乗り越えるしかない」といった傍観者的な意見も見られました。

解決にむけて、多くの人が自分なりにできそうな事を考えて回答してくれたことを嬉しく思いました。
この思いがクラス全体、学校全体に広がってくれることを期待しています。

(*^_^*) 教育相談課では、悩んだり迷ったりしている人の支援をしています。いじめられている人、いじめているひと、何も出来ずにいる人、どんな生徒の話もその人の立場で聴かせて らいます。何かすっきりしない思いを抱えて苦しい時には遠慮なく相談に来てください。また、これっていじめかな?と思うようなことを見聞きした時にも是非話をしに来てください。
私たちはいつもあなたの側にいること、そして、あなたにはかけがえのない未来があること、忘れないでください。あなたは決してひとりではないのです。 (*^_^*)